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香蘭学園
2
少し前までは仲睦まじく、端から見れば理想的な家族像を思わせていたものが、真冬の寒いあの日、一瞬で壊れた。

原因はトラックの居眠り運転。
運転席で運転していた父、楽しそうに笑っていた母が激しい衝撃の後、惨劇に変わり果てたとあとから知らされ、藍は耳を疑った。


「残念ね…。」

「まぁ、元気だしなよ。」

かりそめの言葉などいらないし、意味もない。
顔も名前も知らない、ただ親戚といった括りの大人達は口々に藍を悲観すると共に、違った考えを裏で話していた。

藍の家は比較的裕福な家庭。両親が他界した今、財産は一人息子が受け継ぐのが面白くないと思うものもいる。

藍はそんな会話をつい矢先に聞いてしまった。

投げかける口調は優しく、けれども聞こえてくるのはノイズの混じった本音で、まだ多感な時期の少年には流すことなど出来ない。


「藍君だけでも助かってよかった。これからどうするの?なんなら…――。」

詰め寄ってくる人々は、我先に財産欲しさで藍の元を訪れた。
一人の人間を、ではなく金品のおまけ程度に引き取られる位なら一人で居た方がマシだ。

「いや、大丈夫です。」

「……あ、そう。」

藍が断ると手の平を返したように、舌打ちや不満を本人の目の前であからさまに嫌そうな表情で睨みつけていた。

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あきゅろす。
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