香蘭学園
19
フラフラと家に帰るなり、タバコに火をつけベッドに大の字で横たわる。
ヘッドホンからは大音量の意味をなさない言葉の羅列。
日狩は手を宙に浮かせ、何かをつかみ取る様に目の前で握りしめた。
「あと…一歩だったんだよな…。」
スローモーションで映し出される兄・朔夜の元気そうな表情を思い出し、安堵する。
何をしたいわけでも無い。
ただ合って、話しをしたい、ただそれだけでよかった。
「それにしても…かわんねーな。チビだし…、あん時のまんまちょっとばかしデカクなっただけじゃん。」
煙草の煙を吐き出すと、苦笑が漏れる。
それと同時に、煮えたぎるような腹の中でモヤモヤしたものが頭角をあらわしていた。
朔夜の幸せそうな笑顔が苛立ちを作り上げる。
他人のシアワセは正直、好きじゃない。
「……ムカつく。」
いつの間にか腹が立っていた。
別に朔夜が悪いわけでは無いが、掴めそうで掴めず、何より自分との境遇の違い過ぎる。
一方は幸せに満ちて何不自由なく過ごし、もう一方は死にそうにもがいてもがいて、やっと掴んだ今の状況。
グシャグシャと髪をかきあげ、ヘッドホンを投げ捨てるように地面にたたき付けた。
「…ちょっとばかりイイ気になりやがって。」
苛々は収まることを知らない。
今までの苦労も水の泡だ。
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