香蘭学園
18
「…だから…怒んなっ……て…。」
適当にあしらうのもウザそうに、視界から彼女を遠ざける。
遠くを眺めた矢先、日狩は視界に何かが飛び込み、一点を集中して息を飲んだ。
「朔…夜…。」
「…日…狩君、ねえ、日狩君ったら!」
彼女が日狩の腕を引っ張り、大声で呼び掛けるが全く動じないばかりでなく聞こえていない。
「……うそ…だろ。ワリィ…!」
「え、何!?キャッ…。」
言うが先、彼女の手を振りほどき彼女が尻餅をつくも気に止めることもなく、その方向へ駆け出していた。
人混みを掻き分け進むが、届かない。
見慣れぬ制服姿の朔夜を追い掛ける。
日狩の目に間違いはない。探して、逢いたくて、迎えに来てほしくて待ち侘びた人。
それを見間違えるなど有り得ない。
「朔夜…!」
大声で叫んでも人混みの雑踏に掻き消される。
少し気の強そうなくせして無防備にあどけなく笑う姿、あとほんの少しというのに手が届かない。
駅のプラットホームまで追い掛けるが、またしても指の隙間からこぼれ落ちる水の様に擦り抜け、階段を駆け上がる日狩を待つ事なく朔夜を乗せた電車が発車した。
「…っ。クソッ…」
ゆっくり音を立て、電車がホームから見えなくなっていく。
階段の手摺りに手を掛けたまま見送っていた。
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