香蘭学園
8
スーパーの袋からは大量の酒とパンや惣菜。ドスンと重そたそうな音を立て机に置かれた。
「ねぇ、貴方、ちゃんと面倒見てくれた?」
「…見てたよ。」
「そんなにお酒飲んじゃって、働いてくださいね。」
「わかってるって!」
男はおもむろに母親の買ってきた酒に手を出し飲みはじめる。
「…ママ?」
小さく呼び掛けるが、返事はない。
目の前に映し出されるのは家族なのに家族でない人達。
尤も、母親以外は家族だなんて思ったことはない。
日狩は完全に誰からも相手にされていないことに気づき、唇を噛み締めた。
「…ママ…ママの馬鹿ッ。嘘つき!いい子にしてたら朔夜に合わせてくれるって言ったのに合わせてくれないし…!?」
今までの鬱憤を晴らす様に腹の底から大声で怒鳴る。助けを求めても気づいていない振りをする、義父に殴られても蹴られても黙認する母親に対しての唯一の反抗だった。
「日狩?あら、ママに向かって酷いこと言うのね。」
「え、あ…。ママ…?」
母親が日狩の前にしゃがみこみ、日狩の顔を持ち上げる。
「あの人に段々似てきて…引き取らなきゃよかった。可愛いげが無い。食料もあんまり与えてないのに大きくなるし。」
「……。」
心ない飼い主が犬や猫に語りかける内容を淡々と吐いていく。
信じられない。
今聞いたことを嘘だと言ってほしかった。
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