香蘭学園
7
やっとの思いで赤子を寝かし付けた日狩が歯の根を震わせる。
「なぁ、酒がないんだけど?」
静かに、穏やかそうにじりじり詰め寄って話し掛けてくるが目は笑っていない。
酒癖が悪いのは承知の上だ。
「あ…あの、それで最後です。…お金、ないから。」
「ッち…。使えネェなぁ。あれほど切らすなっていっただろうが。」
怖ず怖ずと見上げると、大きな拳が何度も振り下ろされ、体中に痣が出来るほどて殴り付けてきた。
蹴飛ばされ、体が宙を飛んだ。その衝撃で襖に穴が開く。
「…ギ…ギャーァ、ギャアー。」
「あぁ。可哀相になぁ。ウチには居候がいるからオマエも困るよなぁ。」
突然の大きな音に泣き出す赤子を男が白々しくあやし、日狩に唾を吐きかける。
「何だボウズ?反抗的な態度は?だって本当のことだろう?いやなら出ていけば?」
「すいま…せん…でした。」
反抗した所で義父には大人と子供、力では勝てない。固唾を飲んで今は服従するしかなかった。
いつか、仕返ししてやる。
小さな手を握りしめ、そう心に誓った。
その時、
「ただいま…。」
「お、おかえりなさい。」
大きな袋を抱え、母親が仕事から帰ってきた。
母親は日狩の痣だらけの顔をみても、何等不思議に思っていない。
むしろ、邪魔と言わんばかりに手で払いのけた。
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