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香蘭学園
5
これ以上誰からも取られたくない。
母親を取られてしまう気持ちがあったものの、母親から見捨てられるのが怖かった。

「日狩、もう遅いから寝なさい。」

この意味を知っている。
見られてはいけないことが始まるんだろう。

「はい。」

何時だか見てしまった。
見てはいけない大人の情事。子供ながらにそれは余りにも衝撃的で、口にしてはいけないと覚った。

淫らな姿、喘ぐ母親。
耳を塞いでも目をつぶってもグルグル頭の中を掻き回してくる。
わかっているなら、見ないほうがマシだ。

「おやすみなさい。」

眠くなくても、強制的に戸を閉められれば寝るしかない。
一人で寝ることも慣れた。

朔夜と最後に同じ布団に寝たのは、遠い昔のような気がする。

たわいもない会話、明日のこと、未来のこと。

朔夜とは、今のところ顔を合わす所か、話すことも出来ていない。

『会いにいく。』

ただそれだけを心の糧にして毎日を過ごす。
日々過ごす楽しみはそれだけで、他は何もいらなかった。

嘘。

前の生活に戻れるのなら、戻りたい。
ママがいて、パパがいて、朔夜がいて、暖かいご飯とフカフカのベッド。

悔やんでも悔やみきれないこの気持ちは、どこにぶつけていいものか、今はひたすら待ち続けるしかなかった。

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あきゅろす。
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