香蘭学園
4
冷蔵庫から缶ビールを出し渡すと、無言で着ていた作業着を投げ付けてくる。
汗くさくて、汚くて触りたくも無い。
最低な男。
「…なんだ?反抗的なツラしやがって。」
男が日狩を見下ろすと、鬼の形相で平手打ちが音を立て、頬に振りかざされた。
「…ごめんな…さい。」
肩を落として謝ることしか出来ない。
何が悪いのか、理解するまえに覚えた防御の仕方。
男は最近になってこの家を出入りするようになっていた。
日狩が反抗的な態度や口答えをすれば、暴力で捩伏せる。
「灰皿。」
「ハイ、今おもちします。」
一言、二言。
主語が無い男の注文に棒読みで答える。日狩のことは無償で仕える召使くらいにしか考えていないのだろう。
日狩は、トランクス一枚で寝そべりながらビールに口を付け、TVを見て汚く笑う男を心の底から憎んだ。
ギリギリ唇を噛み締め、行き場の無い怒りを腹の底に沈めた。
「あら、貴方帰ってきてたの?」
「オゥ、さっき帰ってきた。」
母親が仕事から帰ると、日狩には絶対に見せない表情を向ける。
どうやって知り合ったのかは定かではないが、母親は大層この男に尽くしていた。
父親とは似ても似つかない、最低で最悪な男に惹かれ、好意を寄せている。
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