香蘭学園
3
「絶対、遊びに行くから。だから……。だから…だから…。」
泣き虫な朔夜が振り返る日狩を見送る。
隣にいた父親のことなど覚えていなかったが、そこだけは鮮明に記憶に残っていた。
「日狩、ママお仕事行かなきゃだからコレ、適当に食べて。」
手渡されたコンビニの袋には、菓子パンや惣菜。育ちざかりの日狩には質素な食事だ。
「はい…。」
物分かりのいい子を演じる。毎日同じような食事に飽き飽きしてても文句一つこぼさない。
知っている人などここには母親だけ。
母親までいなくなったらどう暮らしていけばいいのか知る術もない。幼心に生活に余裕が無いのを肌で感じていた。
お腹が空いても所持金もなく、冷蔵庫に入っているものといえば、酒と飲み物だけ。
「…おなか…減った。」
空腹でじっとうずくまると幻覚まで見えてきた。
美味しそうな夕食。
ピーマンが食べれない朔夜が泣きながら残してたっけ。思い出し笑いしながら、空腹に耐えた。
「おい、帰ったぞ!!」
数時間経つと、もともと立て付けも悪いのに玄関の古びたドアが壊れるんじゃないか、と思うほど力いっぱい開かれた。無精髭の中年の男が自分の家でも無いのに入ってくる。
「あ、すいません!」
慌てて日狩が飛び起きた。
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