香蘭学園
3
ずっと殻に閉じこもったままで抜け出せなかっただろうか。不意にくる不安にくじけそうになる。
目を閉じ、深呼吸をすると隠すようにリストバンドを元に戻した。
あらかた家の掃除が終わる頃には日が沈みかけ、心なしか小腹が減る。
今日から暫く自炊しなくてはいけない。
藍は面倒だとは思いつつも仕方なくサンダルに財布と携帯の軽装備で近所のスーパーへ出かけていた。
「…望田?」
「…えっ、誰?」
スーパーからの帰り道、突然声を掛けられ振り向くと紺の学ランにスポーツバッグ、この学ランに見覚えがある。
それもそのはず、以前在籍していた公立高校の制服で、かつては藍もこの制服を身纏って登下校していた。
「望田だよな?久しぶり!」
「…絢斗?」
「なんで疑問形なんだよ、寂しいなぁ。ところで元気だったか?久々だよなぁ。」
久々の再会に戸惑う藍を余所に絢斗はスーパーの袋の中身を覗き込んだ。
「あ、メシならウチこいよ。オカンも会いたがってるしサ。」
「え、いきなり行ったらおばさんに迷惑だから…。」
「そんなことは気にしなくていいの。」
背中をポンと叩かれ、並んで歩きだす。
大成絢斗(おおなり・あやと)は小学校からの幼なじみで藍の家の斜向かいに住んでいる。
同じ歳なのに昔から何かとよく世話をやいてくれる為、一人っ子の藍にとって兄的存在だった。
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