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香蘭学園
2
浬はあまり深く理由は聞いてこない。
理解して気遣ってくれていることがひしひしと伝わってくる。

「じゃあ、なんかあったらすぐに電話しろよ。」

「う、ウン。」

そして夏休みにはいった。
浬のことは好きだが、メソメソしたりクヨクヨしている姿は見せたくない。
少しだけ一人っきりになりたかった。

窓を開け、空気を入れ換える。
埃っぽい室内に新鮮な空気が取り込まれると、少しずつ時が戻っていく。

パタパタと掃除を始め、見違えるように家は綺麗になっていくのに藍の心内は微妙に陰っていた。

二階の一室。藍の部屋。
ベッドや机、衣類までもが寮に入る前のままだ。

天窓から入る日差しは、夜になれば月明かりが入り室内を照らす。

「……。」

ベッドに寄り掛かり見上げると、太陽が燦燦と輝いている。

この場所で…。
血が滴っていた床も、今では懐かしい。
藍はそっとリストバンドに隠れた傷痕を確認していた。

「…馬鹿みたい。」

盛り上がった肉が引き攣れて塞がる。過去の自分と向き合い馬鹿らしくて笑えた。

『汚くなんてないよ。』

浬が毎晩何度も囁く。
身体についた傷はそのうち消えるが、なかなか消えない心の傷は浬によって癒されていった。

「…かい…り。」

一人じゃない。一人は寂しくて、風辺りも冷たくて凍えてしまいそうだ。
浬がいてくれなかったらどうなっていたんだろう?

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あきゅろす。
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