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香蘭学園
1
アスファルトが焼け、道路に陽炎をつくる。
真夏の太陽は容赦なく照り付け全てを焦がしていく。

半袖のシャツにジーパンとラフな格好。時折、額から垂れる汗をリストバンドで拭う。

「あつ…っ。」

数ヶ月ぶりに望田藍が自宅のあるこの町へ帰ってきた。

ミィーンミィーンミン…。
蝉がけたたましく泣き出し、喧しさが閑静な住宅街に響き渡ると、藍が一軒の家の前で立ち止まり見上げた。

洋館を思わせ、古びた鉄柵に囲まれている。
鉄柵の施錠を外し、ポケットから玄関の鍵を取り出す。

ギィィィ――、錆び付いた音と共に扉が開いた。

「タダイマ。」

誰の返事もない。
ただ広井だけの空間がパックリと口を広げているようでなんとも不気味だ。

藍は勝手知ったように荷物をリビングに置くと、チェスト上に飾ってある写真に手を合わせた。

「タダイマ。父さん、母さん。」

写真はまだ新しく、ここに写っている人物がこの世にいないのが嘘みたいに笑っている。

望田家、最期の記念写真。
藍を置いて天へ召された二人は写真の中、ずっと微笑んでいた。


「藍、夏休みはどうする?」

藍の同室者であり、優しい恋人でもある南条浬が尋ねる。

「あ、家に一回戻るよ。」


「そうか…。俺も藍の家いこうか?」

「ん、大丈夫。…ウチ、掃除しなきゃだしさ。」

突然の浬の申し出に慌ていたのもあって咄嗟に断ってしまった。

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あきゅろす。
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