香蘭学園
20
「タダイマ。」
外したネクタイと鞄を部屋に放り込む。
お疲れ気味の朔夜が寮に帰ってくると、まだ日狩は帰ってきてはいない。
いつも日狩は後から帰寮するのでさして問題はないが、これからの事で頭が一杯になっていた。
その頃の日狩はと言えば…。また毎度の如く、保健室にたまっていた。
「イイ加減帰れ。」
「真壁センセ、ヒデェよ。」
「お前がセンセとか言うとキモイ!」
鳥肌が立ったのか、真壁が腕を摩る。
敬称をつけるのは当たり前だが、日狩に言われるのは不自然でなんとも不気味だ。
「そういや、禁欲生活してんだってな。」
浬が笑いを噛み殺した。
「スゲエじゃん、大槻なんて性欲魔人っぽいのに。少し見直した。」
「真壁チャン、最低。」
褒めているのかけなしているのかどちらとも取れる。
今までの行いが良くなかったのは日狩も重々承知のため苦い顔をしていた。
「しっかし、お前がなぁ。」
まだ信じられず、疑いの目で真壁が日狩を見るが、本人は至って真剣だ。
「まぁ、何でも俺は構わないけど今までの反動で榎本が壊れなきゃいいけど。」
「壊さねーよ。」
イヤミなのか素で言っているのか。
浬は含み笑いを浮かべる。
「ま、泣かすなよ。」
「そんな鬼じゃないから!」
日狩はタバコに火を付けると静かに目を閉じた。
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