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香蘭学園
19

「朔夜ッ!…ちょっと聞いてる!?」

渡辺が一生懸命朔夜に話し掛けるが、肝心の本人は周りの声が聞こえていない。
何をしても手がつかなく上の空。


あの日から、日狩は毎晩出掛けることもピタリとなくなっていた。

遅くなることはあっても必ず消灯前には帰ってきて顔を合わす。

寝る時も一緒のベッドで、たわいもない話しをしていた。

「朔夜…1ヶ月経ったらちゃんと付き合おうな、って変だな。今は朔夜にとって俺はお試し期間…てことか?」

難しい顔をして日狩が真剣に考える。
それが可笑しいけれど、朔夜の中で嬉しかった。

「アハハハ…、日狩何言ってんの?」

腕にしがみつく。

なんだか照れ臭い。

笑えるくらい自分が日狩を好きで仕方ないことに気付いた。

まだ身体を繋げるのは怖い。けれど、一緒に居ることに意味がある。


そして、とうとう約束の一ヶ月が過ぎ去った。

「ねぇッ、まだ何か考えてるの?」

「あ、ゴメン…。」

「もぅ、今日の朔夜はおかしいよ。」

渡辺は心配そうに朔夜を見つめる。

「そ、…そぉ?」

頬杖を付き平然を装ってはいるものの朔夜の態度はバレバレだ。

「はぁ、とか、ふぅしか言わないし。もしかして…好きな人でも出来た?」

「…んなワケ…ないだろ。」

朔夜は真っ赤になって否定するが渡辺は直感的に確信を感じ取った。

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