香蘭学園
17
「…考えとく。」
俯き加減で朔夜が答える。
「じゃあ、決まりだな。」
「え、あッ…う…ん。」
額を押し当て日狩が強引に話しを進めてしまう。
日狩は、狡猾だと内心思いつつも朔夜の気が変わらないうちに上手く言い包めてしまった。
「でも、そんな直ぐに信じられない…。」
朔夜の瞳は涙で潤む。
今にも溢れださんばかりで日狩を見上げた。
日狩を悩殺にするその表情は、俺様な態度も揺るがせるほど。
それに朔夜は気づくわけもない。
「いきなり言っても信じられないよな…、どうしたら信じてくれる?」
返答に困り気味の日狩が下から朔夜を覗き込み、指先でこぼれ落ちそうな涙を掬いとった。
「…わかんなぃ。」
「そっか…。」
日狩がポケットから携帯を取り出し、電話帳を開くと朔夜に握らせる。
「何、日狩の携帯…?」
画面にはカタカナで女性と思われる名前の羅列。
頭がパンクしそうになっていた。
「そぅ、俺の。」
「…何だよ。見せびらかしたかったの?」
携帯を持つ手が震える。このままではマトモなままでいられない。
「そうじゃなくて。…暗証は朔夜の誕生日。」
単調な電子音。日狩が操作する。
画面に出ていたのは一括削除。
はい、か、いいえの文字が映し出される。
朔夜は息をのみこんだ。
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