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香蘭学園
14
「ハイヨ。」

「まぁ…無理だろうけど。あ、俺も帰るからあとは大槻にまかせた。」

日狩の返事に笑いを噛み殺し、浬が揚げ足を取る。

「ったく、早くつれてけよ。」

ブツブツ愚痴りながら、ネクタイを外すと真壁が保健室から出て行った。

それに続いて浬も出て行く。



「朔夜?」

保健室には二人きり。
機嫌を伺うように日狩が朔夜に話しかける。

「……。」

朔夜は黙ったまま日狩から顔を背けた。

「…返事くらいしろよ。」

困ったように日狩は首を竦める。

沈黙が更に空気を重くさせていく。

「ね…。」

途方にくれた日狩の手が朔夜の頬に触れた瞬間――、

帰ったはずの真壁が息を切らし、保健室のドアを乱暴に開けていた。

「だぁぁッ、テメーらここでヤッたらタダじゃおかないからな。早く帰れよ!」

それだけ告げると鼻歌混じり。
何故か上機嫌でまた帰って行く。

朔夜は驚き、不意に日狩と目を合わせてしまった。

「…何だ。真壁チャン、イイコトでもあったのか?」

ポツリと日狩が呟く。

「あ。アハハハ…。」

何も喋ろうとしなかった朔夜が腹を抱えて笑い出す。

「朔チャン、帰ろうか…。立てる?」

今なら…、日狩は朔夜に手を差し延べた。

「イラナイ。一人で帰れるから、日狩はさっさと俺なんか待ってないで帰れよ。」

朔夜は直ぐに振り払った。
優しくされるのも変な期待を持ちたくない。

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あきゅろす。
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