香蘭学園
11
朔夜にとって浬は苦手な人種だ。
「南条、大槻のツレは起きたのか?」
勢いよく白いカーテンが開かれると、冷酷そうな面持ちのここ私立香蘭学園の非常勤保健医で真壁一至(まかべ・かずし)が訝し気な面持ちで朔夜の様子を伺っていた。
着崩した白衣がやる気のなさを感じさせる。
「あ、真壁チャン。今起きたから大槻に知らせてくる。」
「ハイハイ。宜しく頼む。」
日狩を呼びに行く、と告げた浬に真壁はヒラヒラと後ろ手に手を振った。
「……。」
「バカだなぁ。寝不足だろ?貧血で倒れるなんて、ちゃんとテメエの体調はテメエで管理しろよ。」
第一声はこれでも一教師か、と耳を疑いたくなる真壁の態度。
滅多に保健室など来ない健康優良児の朔夜には強烈な印象を与えていた。
「スイマセン、ちょっと…。」
「何でもいいけどこれでも飲んどけ。」
渡されたのは〇秒チャージとTVのコマーシャルでやってるアレ。
腹は減っていなくともこのくらいなら受付そうだ。
有り難く飲み干した。
「――熱はないな。」
真壁は朔夜の額に手をやり、カリカリ日報に書き留める。
事務的な対応でも、仕事は仕事としてきちんとこなすらしい。
高等部にはいってから耳にした事はあるが、用も無い生徒には己の美貌を武器に冷たくあしらうと聞いていたので思わず身構えてしまっていた。
長身、キツイ印象の流し目は恋愛感情が無い朔夜にもドキドキさせるのには十分で釘づける。
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