香蘭学園
33
暫くおとなしく日狩の腕に朔夜が収まっている。
前触れもなく、服の裾から素肌に直接手の平が潜り込む。
｢…って、何もしないって約束だろ？｣
身体が跳ねる。それ以上手は動かないにしても素肌に触れる感触に朔夜の鼓動が速くなっていた。
押さえようと思えば思うほどに大きくなる心音。必死に平然を装うために唇を噛み締め耐えていた。
｢…この状況ではしないよ、第一出来る状態じゃないし。それとも期待してた？｣
日狩はいつもみたいに笑いながら意地悪く茶化してくる。
｢あ、あのさ｣
｢なに？｣
｢誰かと、勘違いしてるなら別に俺じゃなくて違う奴に看病してもらえよ。…友達ﾝとこ、日狩が邪魔だったらそっち泊まるから…だから…。｣
誰かの代わりにこんなことをしてくるのだろうか？
だったら自分じゃなくてもいいのでは。
そんな疑問と、嫌気が沸き出す。
苛立ちからきつく日狩にあたっていた。
｢別に代わりだなんて思ってねーよ。｣
日狩からは逆切れなのかﾑｯとした口調。
｢だって…先輩と付き合ってるって聞いたし…。｣
｢は？誰だよそんなんいったの。意味わかんねーし、俺は誰とも付き合ってなんかないから…。｣
抱く日狩の腕がｷﾞｭっと強くなっていた。
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