香蘭学園
32
逃げたくても、いくら熱を出しているからとはいえ日狩との力の差を身をもって感じさせられる。
前に無理矢理犯された恐怖心が沸き上がり一心不乱に腕をブンブン振って払いのけようとしても全く怯む様子はない。
それどころか、捨てられた犬の様に縋り付き寂しそうに見つめてくる。
「なんか狡いよ…。」
ぎゅっと奥歯を噛み締めた。
犯したくせに。
いくら弟だからといっても嫌な奴なのに、拒絶したくても出来ない。
ビクビクしながら日狩の次なる行動に身を固くしていた。
だが、抱き着かれるだけで特に何かをされる様子は見られない。
「…なんもしないから、傍に居るだけでイイ…。」
背中から聞こえるのはいつもの日狩らしからぬ台詞。思わず耳を疑った。
何故か胸の奥が締め付けられる様に痛い。
「ったく…わかったから、部屋着に着替えてくるから離せよ。」
日狩には力では叶わないのは朔夜も百も承知。
おとなしく抵抗するのを諦めていた。
部屋着に着替え、再び日狩のベッドへ潜り込む。
「朔…夜…。」
日狩が朔夜に手を伸ばすと背後から抱きしめてくる。首元に当たる日狩の吐息が辛そうだ。
腰に腕を回され背中越しに日狩の体温が伝わってくる。
その熱さに目眩がしそうだった。
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