短編小説 hot,hot,hot. あぁ――…… 秋がこんなに冷たいなんて、知らなかった。 hot,hot,hot. 「あぁぁぁ………さみ。」 「お前、この頃いっつもソレばっか」 「うるせぇ、さみぃんだよ、仕方ないだろ」 「まぁな。今年の秋の寒さ半端ねぇわ、あり得んティーだわ」 (そっか、まだ秋か……もう、とっくに冬だと思てった。今年は取り分け寒いから……、それに) 「古い」 「古い!?……まぁ、だよな、言葉は時代の流れの様に消えてくもんだもんなぁー」 「……………」 「?なぁーに、どうしたの。黙っちゃって。あれか、卒業が寂しくなったのか」「うっさい、黙れ。遅刻する」 「そっか、じゃあ走るか」 「なんでだよ」 「あったかくなるでしょ」 「さみぃ」 「走りゃあったかくなるよ」 お前のその底知れぬ笑顔は、どっから湧いて出るんだ。 全く、今の時期受験やら就活やらで笑ってる奴なんていねぇのに……。 お前は、不安じゃねぇのかよ? 「走ろうよ、ねぇ、不安とか疲れとか悲しさとか、全部忘れられるくらいさ、やっぱし、今は辛いじゃん、色々」 あぁ――――――― ………… そうか、みんな同じだった。 例外なんて、ない。 「……るぞ」 「え?」 「走るぞ、負けたらジュース奢りな」 そう言って俺は走り出した。 「え…あっ今の無し!!」 「男に二言は無い」 ほら、学校まであと数メートル。 先に昇降口に立ってる校長の頭にタッチしたのは俺。 「ハッ…ハァ、紅茶花伝ホットな」 「お前、速すぎ。文化部だったくせに」 「無駄な悪あがきすんな」 「へぇへぇ、紅茶花伝ホットね」 「……なぁ」 「ん?」 「今年の秋は、特別寒いな」 「……ああ。そうだね」 「「あぁ、さみぃ」」 END [*前へ] [戻る] |