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Heavy smokerbaby once more cry.
プール掃除








「んじゃ、お前………わり、名前なんだっけ?」

はっと気づいたようにユートピアが言う。
名前…。僕は自分の名前が好きではなかった。
小椋ノエル

ハーフの俺は、



「………小椋」




「小椋ね、下の名前は……?」



「…………別に言わなくていいだろう。」



「ま、それもそうだな。じゃぁ、小椋が俺に”名前聞いて“ってゆーまで聞かない」




「何だそれ。」




「そのままだけど?」









………………。



…………最初の緊張が嘘のようにない。










これもユートピアの、

クラスに普通にいるような男子の口調のせいなのか……。








僕だけじゃない。


きっとこの学校の奴ら全員が、驚くはずだ。




僕達は、ユートピアを神様のように考えていた。




自分達とは違う次元にいるような、
そんな感覚だった。








でも違うんだ。


ユートピアも普通の男子高校生で


僕達と何もかわらない男の子。


性格は汚いが。









ハァ。
何だか、今までのユートピアを熱心に崇拝していた自分がアホらしくなって
考えるのをそこで止めて、掃除に専念することにした。



「小椋、小椋、準備できた。水出して」




ユートピアは、制服のズボンをまくり、裸足でプールの真ん中に


デッキブラシを持って立っていた。


いつも屋上にいるくせに、まくったズボンから覗く足は、異常な程に白かった。




「わかった」



そう言って、僕は備え付けの蛇口をひねる。




ゴポゴポとホースから水が溢れ出た。


同時にプール側面の穴からも水がわきだす。



「うわっ、冷てぇ」



少しずつたまっていく水に、ユートピアは嬉しそうだった。




「小椋、もういい。水止めて」




プールの底から、20センチほど水がたまると、蛇口をひねって水を止めた。



「さ、小椋掃除。」



そう言って、デッキブラシを一本渡してきた。



「………うん」




なんだか、奇妙な気分だった。


つい数分前に会ったばかりの


しかも、ユートピアと

まるでちょっと不真面目な生徒がこっそりプールで遊んでいるような………








そんな




僕が今まで生きてきた中で、


知ることのなかった体験が感覚が


こう、身体中をくすぐったいくらいに駆け巡って………









なんだかとても、




泣きたい気分になった。











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