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Heavy smokerbaby once more cry.
接触




ユートピアの声は、予想通りに綺麗で透き通っていた。

僕は、神様にでも会っているような気分で


ユートピアからの質問なんて、全く頭に残っていなかった。




「聞いてんの?何でこんなとこ来たのかって聞いたんだけど」

少し眉をひそめてユートピアが聞き返してきた。
機嫌を損ねてしまったのだろうか。




「え……と、罰掃除……?」

「質問を質問で返すな。俺が知るかよ」


ユートピアは、呆れたようにそう言った。

…………それも、そうか。


でも本当によくわからない。

ここへ来たのは、確かに罰掃除という名目だか……
今までに、レポートを出さなかったくらいで、罰掃除なんて


きっと前代未聞だ。

何故、屋上プールなのか。

何故、今回に限ってそうなのか。

全く真相がつかめない。




「…………何?自分でも色々考えちゃってんの?別にそこまで深く考えてもらわなくても

いいんだけど。」

目の前の顔から発されたとは、信じられないような言葉だった。




何だ、こいつ。

外見は、噂通りだけど、話した奴が殆どいないだけあって

かなり残念な性格だ。



「んで?何で罰掃除?」

不思議そうに首を傾けてユートピアが聞いてきた。


無意味に提出しなかったレポートの事を、言うのは恥ずかしかったが僕は素直に答えた。


「……ドイツ語のレポート提出しなかった」



「ブハッ、何、ドイツ語?んなもん人生必要なくても生きていける」


ハハハとユートピアは、空を見上げて笑っている。

その姿に少しみとれてしまった自分がいた。
この学園にいて、ドイツ語を習っていないユートピアのほうが珍しいのだが、一度も授業に出た事がないと言う噂は本当なのだろうと思った。



「でもさ、俺は思うよ。」


「え?」


「今までの生活をしていたら、きっとこんな所には来ない。けど、小椋は来た。きっと何かが変わったんだ」


緩い風を浴びながら、僕はユートピアの言葉を考えた。

今までの生活から何かが変わった?確かに、普段通りの生活をしていれば、こんな所に罰掃除なんてしに来る必要などなかった。
変わった?それはドイツ語のレポートを提出しなかった事か?







「んで?してくれんの?プール掃除」


僕の思考を遮ってユートピアの声が耳に響いた。

「………あ、あぁ。」


僕はとっさに肯定の返事をした。
別に掃除は、してもしなくてもどちらでも良かった。

「真面目で結構。」


僕の返事に満足したのか、
ひょい、と飛び込み台から降りたユートピアは僕に近づいてきた。



そして、



「俺も手伝ってやるよ。………掃除、意外と好きなんだ」






今までで一番近づいたユートピアの顔。













――――――……あぁ。


全部持ってかれそうだ。















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