Heavy smokerbaby once more cry.
君
コツ、コツ、コツ、コツ
屋上へ登る階段の一番上。
目の前にある屋上のドアを僕は、ゆっくりと開けた。
ガチャ…ギィィィイ…。
ビューゥゥゥゥウ。
生暖かい風が、煙草の匂いをのせて、僕の頬をかすめた。
少し目を細めた僕の瞳に映ったのは、
緋色の髪をした少年の後ろ姿だった。
これが、ユートピア。
僕は、スッとそう理解した。
噂で聞いていた通りの、緋色の髪。よく見えないが、生暖かい風と共に煙草の匂いも微かにしたので、煙草を吸っているのだろう。
僕の存在に気がついたのか、ゆっくりとこっちを振り返った。
〔ユートピアが振り返る〕
そんなちょっとした動作に、僕はひどくドキドキしていた。
噂でしか知らなかった、皆が夢見ているユートピアが、目の前にいる。
その事にひどく優越感を覚えて、興奮した。
振り返ったユートピアは、やはり綺麗でその綺麗な姿に相応しくない傷を隠すかの様に
白い包帯が、首にまかれていた。
傷が絶えないと言うのも本当だったらしい。
はっとして、とっさに僕はうつむいた。
誰も近づかない。
誰でも夢見ている
ユートピアがこんなに近くにいる。
どんな声なんだろう。
どんな風に怒る?
どんな風に泣く?
どんな風に笑う?
誰も知らない。
なら、なおさら知りたい、聞きたい。
ユートピアは、どんな言葉をその綺麗な口から発するのか。
どんな人間なのか。
僕は知りたいと欲しているのか。
ユートピアを。
(ユートピア…)
僕が再び顔をあげると、
それに気付いただろうユートピアは、ひどく綺麗な顔を崩さずに
「どーしたんだ?こんな所に」
そう、言った。
ユートピア、
君の声は凄く透き通っていて耳に心地よかった事を
僕は生涯、忘れはしないだろう。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!