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Heavy smokerbaby once more cry.
変動




「ま、いいわ。ユートピアなんて」






は……?
何なんだよ、ま、いいって何?





「ユートピアとは、接点ないって言ったけど、ホントは一回だけユートピアに話かけられた時がある」



「え!?」



そうなんだ、僕の他にもユートピアを見て、感じた人がいたのか……。






「玉木も屋上に行ったのか?」



「いや。俺は、テスト結果が貼り出される掲示板の前」



「掲示板……?」




「おう。小椋とは、昨日初めてしゃべったけど、その前から知ってた。

――――……テストで唯一俺が一度も勝てない相手。」



「テスト……?」




「一応これでもお前の次につけてるんだぜ?俺。」





そうか、玉木は学年2位なのか。

下に興味ないから、気付かなかった。



「んで、前回スゲー頑張ったのに勝てなくて、悔しくて、
朝ずっとそこの掲示板で、小椋の名前睨み付けてたんだ」



なんて、やつだ。



「それで気づいたら、誰もいなくて、突然声かけられた」



《今回も小椋が1位だね。》





「声かけられたつーか、あっちの独り言に近いけど」




「あ……」





《知ってるよ、ちょっとだけど知ってる。
―――……小椋の事。》



そうか。
ユトは、毎回掲示板を見ていてくれたんだ。

名前しかわからない僕の事を見ていてくれた。

どうしよう、すごく嬉しい。







「それで、俺はさっきの質問したわけ」



「ああ。ユートピアをどう思ったって質問だな」
てっきり、ユートピアの知り合いとか何かかと思った。




「ああ。それは、ユートピアが気になるってわけじゃない。
……いや、気にならなくもないけど」





「うん?」

どういう意味だ?





「小椋の方が気になる」


「はぁ?」

何言ってんだ、こいつ。



「小椋に桐屋の事知らせた後、俺ずっと小椋を待ってたんだぜ?中々来ないから、仕方なく帰ったけど」




「なんで、玉木が僕を待っているんだ?」




「そりゃまぁ、気になったから」




だからその気になったって何なんだ!!



「前まで、俺の前にいるむかつく奴だと思ってたんだけど、
いつの間にか、スゲー気になってきた。そんで……」



「それで……?」




「桐屋の伝言を理由に話かけた」



「へぇ……」



そんな事全く知らなかった。



「ついでに、ドイツ語のレポート、あれわざとだろ」







…………なんでわかるんだ、こいつ。



「なんで、わかるの?」


「“自由になりたい”“束縛されたくない”俺も考えてたからね。」



「玉木も、そうなんだ?」



「小椋には、及ばないかもだけどね」




親の見てない間に色々やってるし…と付け足した玉木の言葉を聞いて、笑ってしまった。



「ふふ、玉木ならやりそうだ」



笑う僕を見て、玉木は少し面食らった顔をしていたが、ふっと笑ってくれた。




「俺、小椋の笑った顔好き」




今度は、僕が面食らった。こんなにストレートに気持ちを言われたのは、ユトをはめて、二人目だ。

僕は、だんだん体温が上がっていくのを感じた。


「アハハ、小椋顔真っ赤!」



「う、うるさい」







こんな風に人と長く喋ったのも、笑ったのも

僕には、ほとんどない体験だった。





ユートピアと出会ってから、なんだか少しずつ僕の生活が変わっていくような気がした。





今までだったら、玉木となんて、

必要最低限の事しか話さなかっただろう。



誰に対しても、僕はそうだった。








何かが、変わり始めているのだろうか?



―――――……なんとなくだけれど、いい方に。



僕等のめまぐるしい毎日が、突然音を出して急停車したような


そんな、後からじわじわくる驚きに









―――――……僕等は身をまかせた。












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