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Heavy smokerbaby once more cry.
玉木翠




「小ー椋ー!!」






後ろから響く、誰とも知れない声に
僕はため息をついた。





「……何、」




僕は無駄が嫌いだ。誰かは知らないけど、そのでかい声無駄なんじゃないか?




冷めているって?
悪いけれど、元からこういう人間だ。




……――――誰に対しても、こんな反応だ。




別に、孤立したいだとか一匹狼だとか、

そういうのじゃないけれど、馴れ合いたいとも思わないし、
馴れ合わなくても、別にいい。



この学校の誰にも、興味はない。





―――――……唯一ただ1人、




ユートピアを除いては。


















「小椋、ドイツ語のレポート大丈夫だった?」






ドイツ語のレポート……。なんで、こいつはその事を知っているんだ?





ああ、そうか、昨日桐屋が呼んでると伝えてきた……



―――――確か、玉木。


「玉木?」


「おお!あってるあってる。宏じゃないぜ、翠(みどり)な。」






別に聞いてないんだけど。


「で、なんか用?」


別に何もないとか言ったら、精神的経済的にお前の一族の会社を潰してやる。



「あ、今怖い事考えてたろ!」



無駄に勘がいいな……。いや、観察力が優れているのか。
こんなおちゃらけた奴でも、この学校に入っているんだから、頭も良くて金持ちなんだろう。




「ところで!!小椋ってさ、桐屋のとこ行った後どーした?」




桐屋の所に行った後……

屋上に行って、ユートピアに出会った。



まるで夢みたいな時間だった。





「なんか、いい事あったカンジ?」


「え……?」


「顔に出てるぜ?すっげー可愛い顔」










は……?

可愛いとかあり得ない。
本気で引く。何なんだ、こいつ。





「あ!スゲー眉ひそめた!そんなに可愛いってのが、嫌だった?」






なんか、嫌だ。僕自身は会話してないのに、一方的にしゃべられるのは。



「ね、どーしてた?」



「…………屋上、いた」


「屋上?それまたなんで??」



はぁ、面倒くさい。
何故こいつに話をしなければならないのか。


「桐屋に言われたんだ、罰掃除で屋上プール綺麗にしてこいって。」



「罰掃除?そんなのあり得ないだろう、前代未聞だ。しかも、屋上プールって今放置状態だろ?水泳部もなくなった。掃除する意味がない」





玉木が、真剣になってきた。

さすがというか、僕と同じ事考えてた。

こいつホントは、かなり頭いいんじゃないかな。僕の次くらいに。



「僕もそう考えた。でも、結局答えは見つからなかった。」



桐屋本人に聞かないと意味がない。色々考えても、所詮僕達の憶測にすぎないのだから。



「まぁ、そうだな。で、小椋は掃除したのか?」


「した、ほとんど汚れてなかったから、二人でなんてすぐに………………」




あ……





「二人?小椋の他に誰かいたのか。」






「………………」





しくじったか。ユートピアと一緒にいたなんて言ったらまずいだろうな。



……でも、屋上にいるとしたらユートピアしかいない。

もうとっくに気付いているんだろう、玉木は。








「……ユートピア、か?」


「ああ。」



「そうか……」






玉木は、ユートピア信者なのか?
いや、この学校のほとんどの生徒がそうなのだろうが。







「……どう思った?小椋は、ユートピアを見て、接して。」




「え……」




どう思ったのかだって?





「なん、で、そんな事聞くんだ?」





ユートピアの知り合いなのか?


そう、思ったら胸が締め付けられるような感じがした。


(気持ち悪い……だるい)



なんでだろう?

いや、何故だかは分かってる。独占欲だ…………ユトじゃなくて、ユートピアに対しての。

今まで誰も接していないユートピアに自分一人だけが、接し友達となった。そんな優越感を失いたくなかったんだ。


「俺が聞きたいだけだ。嫌なら、答えなくていい」




………………ずるい。

そんな言い方されたら、言わなきゃいけない雰囲気になるじゃないか。




「綺麗だと、思った。一つ一つの仕草が。

それと、虚しいような寂しい気持ちにもなった」




これは、本当だ。

ユートピアを束縛しているのは、僕達自身なのだと改めて感じさせられた。





「そうか。」




玉木の表情が、穏やかになった気がする。




「玉木って、ユートピアの何?」



質問の意味を、僕は聞いた。




「ん……いや、直接知り合いなわけじゃない。気になっただけだ。そこら中にいる信者の一人さ」



そう玉木は、笑って言ったけれど僕はなんだか違う気がした。


周りの奴等とは違う気がしたんだ。






きっと玉木は、僕らの理不尽さに気づいてる。



――――……もちろんその中に自分も含まれている事も。








理解した上での興味なのか。







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