original short-story 忘れなき思い出 ガタッ…バサバサ 爽やかな朝、それはたった一つの音で止まった。下でコーヒーと軽い朝食をとっていた私は2階から聞こえてきた音に驚き一度カップをソーサーに戻すと2階へと駆け上り音がした部屋へと向かう・・・ 「義政、朝っぱらから何をやってる!!」 声とともに部屋に入ると目に入ったのは見慣れた本や紙に埋もれた見慣れた中国着・・・ 紛れもなく義政である。 「あはは、ラフィン殿。おはようございます・・・・」 「おはようって挨拶している場合か・・・」 半分呆れながら埋まってる義政を引きずり出すとついでに落ちた本や紙を元の場所にしまう。義政はそれを苦笑いを浮かべながら手伝っていた。 「で、何をしていたんだ」 「これを見つけたんで・・・まだ、あるかなぁと思いまして」 義政が笑って見せたのは一冊のアルバムだった。 「アルバム?」 一ページ一ページ捲るとそこにはまだ少し幼い義政が写っていた。ぶっきらぼうに写ってるものあれば仲間と戯れている写真・・・意外と多かったのは隊長である男にからかわれている写真だった。 「まさか、これを探して埋もれていたのか?」 「違います。探していたのはこれです」 義政が笑って見せたのは名前と所属部隊名が刻まれた二つのドッグタグ。両方とも刻まれている国章が違う。そして思い出した。義政が軍属上がりだということ・・・ 「かつての軍のドッグタグか?」 「えぇ、そうです・・・まぁ、俺は両軍とも脱兵しましたけどね」 そう言って義政は大事そうにドッグタグを首つけ、中国着を脱ぎ捨てるとかつての軍服を身にまとって私に敬礼をした。 「懐かしいです。軍役時代は毎日こうして敬礼してました」 「そうか・・・・やめた事に後悔してるか?」 その問いかけに義政はいいえ、と答えた。 「後悔はしていません・・・やめたから貴方やノアに会えたんですから・・・これは俺の大事な宝・・・そして思い出です」 義政が自分の首下に触れると二つのドッグタグがチャリと音を立てて揺れた。二つの異なったドッグタグ・・・義政がどんな軍役時代を送ったのかは今となっては私は知ることは出来ない。 ただ、お前が今を幸せに過ごせるように共に居ることはできる。 これからもよろしくな 義政 [*前へ] |