original short-story
どうでもいい知識
何時もと変わらぬ平和な時が流れている。それは喫茶店【BlueBird】も同じだった。そして、誰が想像しただろうかこの先に起こる事態を……
「……義政……」
「何です?」
義政はティーカップを洗った手を止め、長い髪を一つに縛り眼鏡を掛けて本を読んでいる男ラフィンを見た。
「鉈を持ったお婆さんってどう思う?」
何をいきなりと思っても今【BlueBird】にいるのは自分とラフィンだけなので自分が答えなければならない。
何故、自分達だけなのかと言うとラフィンの精霊達はノアに連れられ出掛けて行ってしまったからだ。
「別にどうも思いませんが…」
田舎なら普通でしょ、と答えるとラフィン殿は愉快そうに笑みを浮かべた。
「なら、夜遅くに鉈を持ったお婆さんが道端に立ってたらどう思う?」
何故だ?夜遅くに鉈を持ったお婆さんが居るという実際あってもおかしくない状況だが、夜遅くと鉈、そしてお婆さんという組み合わせは恐い……
「……恐いですね……」
「死神フルネウスでもやはり恐いか……」
ラフィン殿はあいも変わらずに本から目を離さずに答える。あの常日頃から人の目を見て話すラフィン殿からは想像出来ない姿だった。
「義政、お前の名前は東方の国の名だったな…やはり生まれは東国か?」
確かに自分の名は東国の文字【漢字】を使っている。この文字を名で使っている人物は珍しい。まぁ、俺は…
「生まれも育ちもここですがね」
「そうなのか……なら、知ってたか?東国の人間は神を信仰していならしい。その国の人間が信じているのは怨霊信仰……つまり人の祟りだ。不思議だな……神は信じないのに人の祟りは信じるらしい…」
「確かに人の恨みつらみは恐いですが信仰する程ですか?」
「何を言うか!?東国では普通の人間が神として奉られいるんだぞ」
だからって……何故、東国についてあなたがそんなに熱弁するんだ?
「お、義政!もっと面白い物があったぞ!?その国の神は祟るらしい……ほぉ〜成る程」
面白そうに本を読むラフィン殿。そこで俺は初めてラフィン殿が何の本を読んでいるのか分かった……本の名前は“東国の意外な事実”
そして、俺の平和な一日をラフィン殿の趣味に付き合わされて終わった……。
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