Clap byベジータ クリスマスver.
「あ、ベジータ王子!良かった…来てくださったんですね!」
「こんな時間に呼び出しやがって…一体どういうつもりだ?何度も言うようだがオレは忙しい。いちいち貴様なんぞに構ってられんのだぞ!」
「す、すみません…!でも、お約束した時間より1時間も早く来てくださったという事は……まさか、私の為に今日1日空けてくださったんですか?」
「そっ…そんなわけないだろう。さっきまでトレーニングをしていたんだぞ」
「そう、ですか……」
(でも、服が全然汚れていない…という事は、わざわざ新しい服に着替えてから来てくれたんだ……)
「…で?何の用だ?」
「…あ、そうだ!あの、今日くりすますですよね!?とてもおめでたい日との事なので、是非王子にお会いしたかったんですよ!」
「はあ?クリスマスだと?そんなくだらん事でこのオレを呼んだのか!?チッ…!オレの邪魔をしやがって……!」
「私にとってはとても大事な日です!王子に会いたいと思う事のどこがくだらんのですか!?」
「なっ…!?そ、…そういう恥ずかしい事をストレートに言うヤツがどこにいるんだ?」
「王子、それは自分の事をくだらんと言っているようなものですよ!!私は、あなたにはいつでもプライドが高く、ツンデレで可愛い誇り高き王子様でいて欲しいのです」
「貴様…それで褒めているつもりか?全く良いように聞こえんぞ」
「そんな事ないですよ?素晴らしい褒め言葉です!」
「はあ……どうだかな……」
「そんな事より、ほら!これを見てください!今日は王子の為にプレゼントも用意したんですよ!」
「オレにプレゼントだと…?」
「そうです!年に一度の事なので張り切りました!」
(あっ…今ちょっとだけこっち見た…!一応興味を持ってくれてるのかな?)
「べ、別に必要ない!」
「どうして?折角作ったんですから、受け取るだけでもいいので、お願いします!後で捨てて頂いても構いませんから!」
「はあ?捨てるなら貰わん方がマシだろうが。とにかく、オレは受け取らんぞ」
「こんの分からず屋がぁあっ!!つべこべ言わず黙ってお受け取りくだされ!!」
「なっ……!お、おいコラ!待て!」
な、何なんだアイツは……
何か喋り方もおかしかったな。いや、おかしいのはいつもの事だが……
気になるな。何か変な物でも口にしたのか……
しかしアイツ、何を作ったんだ……?
こいつは…マフラーか?
編み目がかなり雑だな…こんなものをオレに使えというのか……
…そういえば、ここ最近頻繁にブルマに会いに来ていたが…まさか、この為だったというのか……
「……オレの為に、何故こんなに一生懸命になるんだ……本当にアイツはバカなヤツだ……」
だが……
何故だか分からんが、オレはアイツを放ってはおけんのだ……
気が付けばずっと目で追っている。それは、アイツが危なっかしいからだと、ずっとそう思っていたが……
…危なっかしいから目で追うだと…?何故だ?ヤツの事など放っておけば良い筈なのに…
この気持ちは一体何なのだ……
「クソったれ……これ以上オレの頭の中に入ってくるな……!!」
*****
「おい待て!!待てと言っているだろ!」
「待ちません!!ていうか…何でもう追いついてんの!?ほう…さては飛んで来たな!?舞空術はルール違反だとあれほど申したではないか!!」
「勝手にルールを作るんじゃない!!それは貴様の足が遅いだけだろう!ハッキリ言うが、歩きでも十分追いつけたぞ!?」
「な、何だと…!?こんのぉ〜…黙って聞いておれば……!」
「…………」
「…………」
「……ん?」
「ま、参りました…ごめんなさい……」
「い、言い返すんじゃないのか……」
******
「王子…すみませんでした。やはり迷惑でしたね…修業の邪魔をしてしまいました……」
「…そんな事、今更だろう。別にもう良い…今日はもうトレーニングをするつもりはない……」
「…………」
「…………」
「何故黙っている?」
「…………」
「おい……」
「ぶぇーっくしょい!!あ"ーくそーッ!!」
「…お、おっさんみたいなくしゃみだな……」
「ず、ずびまぜん……どうも……」
「はぁ〜……こんな寒い中上着も着ずに来るからだろう…鼻水が出ているぞ。貴様はバカそのものだな…ほら、顔を上げろ。拭いてやる」
「…私、羽織を持っておりませんので…お手間かけます……」
ーぶにゅっ!
「むふおっ!!ちょっ…ほっぺた潰さないでください…っ!!」
「顔も随分冷え切っているな……このままでは低体温になっちまうぞ。もっとこっちへ来い。温めてやる」
「あ、あぁあ、あたためるって…べ、ベジータ王子……そんな事をすれば火傷してしまいますっ!」
「はあ?何をワケの分からん事を言ってやがる」
「だって王子、前に言ってたじゃないですか。『近付き過ぎて、火傷するんじゃねぇぞおおお!!』って、それはもう力強く……」
「いつの話だ!くだらんっ…!」
「まさか、そういう意味ではない?」
「当たり前だろ。温めるというのは、背中をさすってやるという意味だ!いちいち自分が言った事を覚えられていては、恥ずかしくなるだろうが…っ!」
「でも、あの時の王子…すごくカッコ良かったんですよ?まさか、地球の人々を守るなんて……素敵過ぎます!!」
「…まさか、ヒルデガーンの時の事を言っているのか?」
「おっしゃる通りです!!」
「…べ、別にアレは庇ったわけじゃない!たまたま地球人が居たビルに突っ込んだだけだ!」
「今思えば、私の事も何度も守ってくれましたよね……やはりベジータ王子は誰よりも輝いています!!」
「か、過去の事は知らん…っ!そんな事を言う為だけに呼びやがったんなら、オレはもう帰るぞっ…!」
「はっ!…す、すみません!お待ちください!ささっ、どうぞ!背中をさすってくださいませ!!」
「…はあ……調子が狂うな……」
****
「…で?何でオレに会いに来た?」
「…え?何で、とは……」
「貴様はいつもカカロットと居るだろう…今日みたいな大事な日に…何でヤツの所へ行かんのだ…?」
「王子は…私を悟空さんの所へ行かせたいんですか…?」
「そ、そんな事は言っていない…!」
「私は…今日ベジータ王子が来てくれて、とても嬉しかったですよ。それに今日の王子は何だかすごく優しいし……」
「…別にそんなつもりはない。貴様に何かあれば、オレがビルスのヤツに文句を言われる。それが気に食わんだけだ!」
「それでも…嬉しいんです。大事にしてくださっているんだなあ…って……」
「チッ…!ワケの分からん事を……」
「あっ、もう十分温まりました!王子のおかげです。ありがとうございます」
「だが、ずっとそのままではまた冷えてしまうな…丁度いい。これを貴様にやる」
「…?これは何ですか?」
「オレがカカロットと氷山へ行った時に着ていた上着だ」
「氷山と言いますと……ブロリーさんが地球に来られた時ですね……」
「ああ、もう必要なくなったからな。一応洗濯はしてある。寒くなったらこれを着ろ」
「何で…わざわざ綺麗に洗濯してまで…もしかして、本当は最初から私にくださるつもりだったんじゃ……」
「…そ、そんなわけないだろう…っ!今日はその…雪が降ってるからな…防寒着として…ね、念の為に持ってきただけだ…!」
「嬉しい…!私の最高のクリスマスプレゼントですっ……!大事にしますね…ありがとうございますっ…!」
「おい!何照れてんだ!!違うと言ってるだろう!人の話を聞け!!」
「ふふっ…あったかいです……」
「くそっ…もう知らん!勝手にしろ!」
「あ、あの…ベジータ王子は…今日はどうして来てくださったんですか?」
「…なに?」
「大好きな修業を我慢してまで…どうして私のワガママを聞いてくださったのですか?」
「…このままオレが来なかったら、貴様はどうしていた?」
「え…それは……」
「…貴様の事だ。どうせオレが来るまで何日も待っているだろう」
「…………」
「こんな寒い中、何日もジッと待っていられたら、オレもトレーニングに集中出来んのだ……」
「ベジータ王子…私を心配してくださったのですか……」
「さっきも言ったが、オレはビルスに貴様の面倒を見るように言われている。だから、その役目を果たしているだけだ。それ以外の理由はない。というよりも、それ以上の事はしてやれんのだ……」
「そう…ですか……」
「だが、まあ…さっきのプレゼントは…一応貰っておいてやる」
「え…何で……」
「何でって…元々オレに渡すつもりだったんだろうが。今更返せとは言わせんぞ」
「…王子……」
「だ…っ、だが勘違いするなよ!!別に嬉しいとかではないからな!!」
「ありがとう…ございます…王子…」
「リファ、分かっているとは思うが、貴様にも色々事情があるだろう。どうにもならない事もある。認めたくはないがな……」
「…そう、ですね……」
「だが、答えは必ずしも一つではない。だから、絶対に諦めるんじゃないぞ」
「そのお言葉、心に留めておきます」
「…貴様の気が済むまで一緒に居てやる。今日だけだ……」
ベジータ王子はそう言って、私の肩を優しく抱いてくれた。
そして、朝が来るまで何一つ文句を言わず、ずっと一緒に居てくれた。
けど、すぐ近くに居るのに…すごく遠い存在に感じた。
彼は不器用でよく誤解されるけど、私には分かってるよ。
本当は誰よりも優しく、誰よりも人の痛みが分かる人なんだって…
素っ気ない態度を取ったり、時には優しくしてくれたり……どっちつかずの対応に振り回されてばかりだけど、
それも私の為ーー。
事情をちゃんと理解してくれているからこその対応なんだって……
そんな事は分かっているよ…
分かっているけど……
どうしても期待しちゃうんだよ…
願っちゃうんだよ……!
あと数センチだけでも私に近付いて欲しいって……
一瞬よりも長く、見つめて欲しいって…
王子、私は貴方の1番になりたいだなんて思いません……
でも、密かに想いを寄せる事だけは、許してください……
Clap Message byベジータ
クリスマスver.
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