謎の影 そして、ついにハロウィンパーティー当日を迎えた。 リファは、集合時間よりも早めにブルマの家へ向かった。 「ブルマさん、こんにちは!」 「リファ、早いわね!ふふっ、そんなに楽しみにしててくれたの?」 まるで遠足を楽しみにしている子供のように、とびっきりの笑顔で挨拶をするリファに、ブルマはつい口元が緩んでしまった。 「勿論です!今日の為にこれを完成させたのですから!」 そう言うなり、透明のゴミ袋から取り出したのは、見事な姿となったあのモアイの衣装だ。 それを見たブルマは、かなり驚いている。何歩か近付くなり、膝を曲げてはその完成品をマジマジと見つめた。 「えっ!?本当に間に合ったんだ!?すごいじゃない!」 まさか間に合うとは思っていなかったようだ。残った作業を引き継ぐ為に、材料と道具も一式用意していたらしい。 「どーれどれー……?」 完成品を手に取り、縫い忘れやその他見落としがないかを確認する。 多少縫い目の荒い箇所が目立つが、裁縫などした事がないリファにしては、なかなかの出来栄えである。 「うん!上手に出来てるわ!」 「ほ、本当ですか!?頑張って良かったです!」 天才科学者であるブルマに褒められ、リファは有頂天になり、ニヤケが止まらなくなってしまった。 「早く着てみたいなあ…パーティ、楽しみですねっ……うわっ!」 衣装を抱き締めながら、パーティが待ち遠しいと幸せそうな表情を浮かべているリファ。 そんな無邪気な彼女が何だか可愛らしく見えたブルマは、つい頭を撫でてしまった。 「そうね、みんなが集合するまでまだ時間があるから、衣装は預かっておくわ。まとめて置いてある部屋があるから、ついて来て?」 「分かりました!」 そして、歩く事10分が計画した。 ブルマは入り口に設置されているボタンを慣れた手つきで押し、扉を開ける。 「さぁ、入って?」 「し、失礼しますっ!」 少し緊張しているのか、リファの表情が硬い。そして、いつもよりも控えめに足を踏み入れる。 「わぁあああ……」 扉の向こうは、まるで絵本の中の世界のよう。キラキラした衣装が沢山並んでいる。 「すごい!これ皆さんが着る衣装ですよね!?ブルマさんはどれを着るおつもりなんですか?」 どこに目線を置いても立派な衣装が目立つ。どれもブルマに似合いそうな衣装ばかりだ。 「私もみんなと一緒にくじ引きにしようかと思うの」 「えっ…それじゃあ何で私だけ……」 何故自分だけ好きな衣装を選ばせてくれたのか、リファは疑問を抱いた。 すると、ブルマはにっこり笑顔を見せ、 「リファは今までハロウィンなんて知らなかったでしょ?初めての仮装パーティだし、楽しんで貰いたいの」 ブルマは、リファに地球の良さを知って貰う為、年中行事には必ずみんなを集めてパーティをする事にしているらしい。 それは、彼女に一日でも早く地球に慣れて貰う為だろう。 「ブルマさん……」 自分の事をここまで考えてくれているのだと思うと、嬉しい気持ちでいっぱいになり、前が霞んで見えなくなった。 地球にやって来て、本当に大切な仲間を持った。 この気持ちは1000年先もずっと忘れる事はないだろう。 「さあ、そろそろみんな来る頃よ。パーティ会場へ行きましょ!」 「はいっ!」 ブルマは入ってきた時と同じように、ロックをかけ、部屋から離れて行った。 「……………」 そんな二人の姿をコッソリと覗く影があったなど、その時は誰も知らない。 、 [*前へ][次へ#] [戻る] |