眠れない裏で あれから何日もかけ、衣装はやっと完成に近付いていた。 その何日間、悟空にだけは一度も会っていない。いや、会えなかったと言った方が正しい。 何度も会いに行こうと試みたのだが、タイミングが合わなかったらしい。 仲間の話によると、悟空は昼間はどこかへ出掛けているのだという。 詳しい場所や、その理由などは聞かされていないようだ。 向こうからも全く音沙汰がない為、どうしようも出来なかった。 「悟空さん……」 ピタリと縫う手を止め、窓の外を見やる。ほぼ毎日顔を見ている相手だ。こうも何日も会えていないと、寂しさを感じてしまうのは無理もない。 一体どこで何をしているのだろうか。 パーティーはもう明日に迫っている。果たして彼はちゃんと来てくれるだろうか。 前日の夜。本来なら楽しみで眠れない筈なのだが、今回ばかりは悟空の事が心配で、なかなか眠れにつけなかった。 ******** その頃、悟空はというとーー。 「なあ界王様、まだ見つかんねぇのか!?早くしてくれよ!時間ねぇんだ!」 「やかましい!集中出来んじゃろう!少し待っておれ!」 悟空は界王星に居た。何の為かはいまいちよく分からない。 だが、悟空がその場で腿(もも)上げをし、かなり焦っている事から、相当重要な事である事は確かだろう。 一方、界王星の主である界王は、悟空に急かされイライラしている。 先程までピンと前方に伸びていた触角が、左右バラバラの方向に向いてしまった。 とすると、何かを探しているのだろうか。 「ところで……何でまたこんな事をワシに頼みに来たんだ?しかもこんなギリギリに来おって…」 「ブルマに言われたんだ。今回はただのパーティーじゃねぇって……どういう意味なんか、最初は全く分かんなかったんだけどよ……」 そう言うなり、悟空は腰にぶら下げている鈴を握り締めた。 この鈴は、以前リファが持っていた物である。色んな事があり、悟空の手に渡ったのだという。 「けど、何となく分かったような気ぃすんだ……」 「なるほどな……ここに来た事がお前の答えというわけじゃな?」 その鈴に気が付いた途端、界王の丸いサングラスがキラッと光る。 恐らく彼はそれが誰のもので、どういった経緯で悟空に渡ったのか、全て見通しているのだろう。 「ほれ、見つけたぞい。あっちの方向じゃ」 こうして会話をしている間も、界王の星探索は継続していたようだ。触角がピンと遥か遠くの方角へと指した。 「ほんとか!んじゃあ、ちょっと行って来る!サンキューな、界王様!」 待ってましたと言わんばかりに、直ぐ様額に指を添える。 「ああ、ちょっと待て悟空。用が済んだらまた此処に戻って来い」 だが、咄嗟にある事を思い出した界王は、慌てて悟空に待てと制止させる。 「……へ?なんで?」 界王の言葉に、悟空は額に指先を添えたまま、首を傾げた。 「詳しくは帰ってからじゃ。とにかく早く行って来い」 「……何かよく分かんねぇけど、もう一回ぇ此処に来りゃあ良いんだな?」 分かったと頷いた後、悟空は一瞬のうちに消えてしまった。 それにしても、一体誰に会いに行ったのだろうか。 それは誰もが予想だにしない、意外な人物だった。 、 [*前へ][次へ#] [戻る] |