カソウパンチィー
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「うむ…10月31日か…わかった。考えておこう……恐らくピッコロが向かう事になるだろうが……」
「お願いします!では神様、私はこれで失礼します」
神様の宮殿へ向かっては、急いで次に向かいーー。
「おお、リファではないか!元気にしておったか?」
「閻魔様、ご無沙汰です!閻魔様…はお忙しいと思いますので…どなたか閻魔界で下界に来られる方を紹介して頂きたいのですが……」
「誰か閻魔界の者をのう…分かった。検討しておこう」
そのまま閻魔界へ向かい、そして再び下界へ戻ると、今度はある者を訪ねた。
「リファ、お前今日は休みじゃなかったのか?」
「そうなんですけど、ラディッツさんに大事な用があったので…少しよろしいでしょうか?」
それは、悟空の兄であるラディッツである。
帽子を被り、仕事着を着ている事から、現在働いているようだ。
表舞台から完全に退(しりぞ)いたとはいえ、リファとは会う機会が多いようで、ある意味仲間のような関係を築いている。
生死をかけた闘いには一切参加しないが、街中で起こる事件などには気まぐれで解決しに向かう時があるようだ。
リファの身に危険が及ばないように、未然に防いでいるのかもしれない。
「ひぇえ…相変わらず力持ちですね…頼もしいです。周りの人、みんなビックリしちゃってますよ……」
そんな彼は、丁度大量の荷物をトラックに積んでいる最中であった。
何段も重ねられた重そうなダンボールを軽々と片手で持ち上げている姿を見ると、やはりサイヤ人の力は偉大だと感心してしまう。
「…いや、流石に周りのヤツらはもう慣れたようだ。驚いているのは、多分お前がワケの分からん雲に乗ってきたせいだと思うがな……」
「え…?あ、ああ……そっか!」
未だ筋斗雲に乗り、フワフワと浮いているリファはラディッツに指摘され、慌てて降りた。
「…で?何だそのへろーうぃーってヤツらは……」
「えっと…カソウというもののパンチィーだそうです」
「……は?」
何の事を言っているのか分からず、ラディッツは再度聞き直す。
「いや…だから、カソウパンチィー」
「……悪い、何の事か全く分からん」
だが、返ってくる答えは変わらず。聞いた事もない言葉に困惑し、眉をひそめてしまった。
「えっ!?ち…違うのかな…な、何か10月31日だけに行われる…えっと…何とかっていう集まりだって聞いたんですけど……」
「お前…主催者とどんな会話してたんだ…?へろーうぃーってハロウィンの間違いだろ…それと、パンチィーではない。パーティーだ」
ーーぐいぐいっ
「あいたっ!」
リファのボケっぷりに耐え兼ね、ラディッツは彼女の額を人差し指で軽く触れた。
「…ら、ラディッツさん…何か私より地球に馴染んでませんか?」
自分より地球の知識を得ているラディッツに負けているような気がしてならないリファ。
よほど悔しいのか、その場で地団駄を踏み、力一杯に拳を握り締めている。
「さあな…こいつも仕事柄だろ…以前は宇宙を飛び回っていたからな」
「…それは以前事務ばかりやっていた私に対する挑戦ですか……?」
「フッ…さあな……」
「ごまかさないでくださいよ!じゃあどちらが地球に詳しいか勝負しましょ!」
「はあ…分かった。だがまた今度な」
やる気満々なリファに対し、ラディッツは軽く受け流している。まるで子供扱いするかのように彼女の頭をポンポンと叩く。
当然リファは、風船の如くむくれている。このやり取りも、いつもと同じだった。
「それより、その日は難しいかもしれん。さっき予約で大量に注文が入ってな…3日前ぐらいから用意しろってリーダーに言われているんだ」
帽子を取り、首に巻いているタオルで汗だくになった顔を拭きながら答える。
「行けないんですか…それは残念です……」
行けないと分かった途端、リファの表情が半端なく沈んでしまった。
「そんな顔するな。カカロットやベジータ王子も来るんだろ?…顔ぐらいは出しに行ってやる」
「ほんとですかっ!?」
「…お前…分かりやすいな……」
「だって!来てくれたら嬉しいじゃないですか!みんな、待ってますからね!」
「はぁ〜…お前なあ…まあ良い……」
顔を片手で覆い、やれやれと溜め息をつくラディッツ。
まるで兄妹のように、自分に対してだけは特別に慣れているのだろう。
分かっていても、彼女のストレート過ぎる発言には毎回驚かされるようだ。
時には、顔を真っ赤にしてしまう事もあるのだという。
「とりあえず詳しくはまた今度聞く。それまでにその意味の分からん言語を何とかしておけよ?」
トラックの荷台扉を閉め、くるりとリファの方を振り返る。若干笑っているようにも見える。
「うっ…!わ、分かりました!お仕事中にゴメンなさい!」
慌てて頭を下げるリファに対し、ラディッツは再び背を向け、帽子を深く被り直した。
「…いや、わざわざオレまで誘いに来てくれたんだ。礼を言う」
「あ……いえ……」
それが照れ隠しであった事を、恐らく彼女は気が付いていないだろう。
、
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