筋斗雲とリファ
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あれから数時間が経ち、カラスが鳴き始めた頃、トボトボと帰る道を歩いていた。
「……はあ…」
何やら浮かない様子だ。何度も溜め息が漏れる。まさか、あの後ブルマと何かあったのだろうか。
悟空から借りている筋斗雲も使わずに、カプセルコーポレーションから何百キロもある自宅まで徒歩で帰ろうとしているその姿からして、深刻な状況に追い込まれている事は確かだ。
「…とりあえず、ブルマさんに頼まれた人達には伝えておこうかな…」
そう呟くなり、懐から一枚の紙を取り出した。
そこには、何人かの名前がズラッと一覧表のように記されている。
勿論、その中に悟空とベジータの名は入っている。が、とりあえずこの二人は後回しにし、他を回る事にした。
すぅーっと息を吸い込み、空に向かって力一杯叫んだ。
「筋斗雲さーん!お願いしまーす!」
そして数秒後、筋斗雲という黄色い雲がやって来るなり、リファの前でピタリと停まった。
まるで雲のタクシーのようだ。
「筋斗雲さん、これから向かって頂きたいところがあるんですけど、よろしいでしょうか?」
フワフワした雲を撫でながら問うと、筋斗雲は自分から面積を広げた。
OKの合図だろう。
「助かります!じゃあ、ちょっと失礼しますね…よいしょっと…」
いつものように、筋斗雲に腰掛けてから足を乗せる。未だ筋斗雲に飛び乗る事に抵抗があるらしい。
筋斗雲にも心があるような気がしてならず、衝撃を与えると痛いのではないかと心配になってしまうのだという。
その為、筋斗雲に乗る時は出来るだけ慎重にゆっくり行う事にしているのだ。
筋斗雲も、彼女の想いをよく理解しているのか、悟空や悟飯が乗る時よりも低い位置で浮いている。
ほんの些細な事だが、微笑ましい光景である。
「では出発ー!筋斗雲さん、お願いします!」
出発の合図を聞くと、筋斗雲はフワフワと空高く舞い上がり、ゆっくり前進し始める。
因みに、リファを乗せて移動する速さは、だいたい自転車で走るより少し速い程度らしい。
以前起きた問題もあってか、筋斗雲も学習したのだと思われる。
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