[携帯モード] [URL送信]
ブルマの家にて





これは、一時的に平和になった地球での、ちっぽけだが大きなエピソードである。


地球では暑い夏が過ぎ去り、景色はすっかり赤や黄色に染まっていた。


そしてある日の午後、リファはブルマに大事な用があると呼び出され、カプセルコーポレーションを訪ねていた。


ブルマの私室で、紅茶とケーキをご馳走になりながら、色々雑談を交わした後、ようやく本題に入る。



「え…?今月末にお祭り、ですか?」


「そ、もうすぐハロウィンでしょ?どうせならパーッと派手にやりたいから、アンタにも協力して貰おうと思ってさ」



フカフカのソファーで足を組み、楽しそうに話すブルマ。


彼女は、仲間がみんな揃って集まれるように何かの記念日と題し、年に何度かパーティを開く事がある。


何か特別な理由がなければ、自分から会いに来ない者がいるからだ。


それは勿論、孫悟空である。


そして、今回もきっと修業で来ないに決まっている。一番付き合いの長いブルマは既にお見通しのようだ。



「それでさあ…リファから孫くんに言ってくれないかしら?今回は絶対参加しなきゃダメだって!」



自分が散々言ってもなかなか来ない為、今度は悟空とよく一緒に居るリファに彼を連れて来るよう頼む事にした。



「それは構いませんけど…何でまた?それに私…【へろーうぃー】って何の事かあんまり分からなくて…「あんまりどころか全く分かってなさそうね!?何よへろーうぃーって!ハロウィンよ!ハ・ロ・ウィ・ン!」



リファの外国人かぶれした発音に、思わず紅茶を吹き出しそうになったブルマ。


だが、本人はというと相変わらずぽけーっとしている。


さすがはリファだ。ユニークランキングでも軽く上位に入るだろう。



「あ、あのね……リファ…ハロウィンっていうのはね…ケルト人によって生み出された祭りの事よ……」



紅茶を一気に飲み干し、ブルマはハロウィンについて簡単に説明し始めた。


ハロウィンという行事は、本来秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す祭りであったらしい。


ケルト人にとっての1年の終わりが10月31日であり、彼らはその日の夜を死人の為の祭りとし、悪霊などの怨念を鎮めていたそうだ。


だが、月日は流れに流れ、現代では民間行事として定着し、祝祭本来の意味を知る者は極めて少なくなってしまった。



「現代のハロウィンっていえば、簡単に言うと仮装パーティーね」


「えぇ!?仮葬!?今から死ぬ準備なんて…そんな縁起でもない事を!」
「違う違う!字が違うわよ!仮葬じゃなくて仮装!」




慌てて立ち上がり、ソファーの後ろに隠れるリファ。


半泣きになって震えているが、ケーキの乗った皿だけは手放さない。ちゃっかりしたものである。



「…リファ……」



突っ込みどころ満載のリファに対し、ブルマはギャグ汗を流している。


彼女の顔には、ケーキの食べカスがあちこちに付着している。恐らく先程リファが仮葬云々で声を上げた時に飛んでしまったのだろう。


ブルマは何事もなかったかのようにタオルで自身の顔を拭い、ソファーの背もたれを覗き込む。


リファの奇想天外な言動にも、ついに慣れてしまったのだろうか。


敢えてツッコミは入れず、話を進めた。



「と、とにかく…孫くんにパーティには絶対参加するよう言っておいてね…?」


「わ、わがりまじだ…っ…」



鼻水をズズッと吸い込み、ソファーの背もたれからノソノソと出てくる。


よく見ると、皿に乗っていた筈のケーキがなくなっている。いつのまに完食したのだろうか。


だが、それでもブルマは敢えて何も言わない。完全に慣れてしまったという事だろう。



[*前へ][次へ#]

2/66ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!