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支配者の妃






「願いは叶えてやった。さらばだ」



流石の神龍も聞くに堪えなくなったのか、それだけを言い残すと再び眩い光を放ち、空高く舞い上がる。


やがて神龍の姿は消え、元の七つのドラゴンボールに変化するなり、それらは一つ一つ別の方角へ飛んで行った。


本来なら、此処いらでひと段落つく筈だった。


だが、今回ばかりは違う。有り得ない事態が起きたのである。



「ん…?んんっ!?な、何だこの者は…」



神龍が放った光の余韻に乗ずるように、落下途中だった筈のリファが現れたのだ。


彼女はピクリとも動かず、地面に倒れていた。


ガーリックJr.は、恐る恐る彼女に近付き、様子をうかがう。



「ーーんなっ!?」



そして、その顔を目にした途端に酷く驚き、両手で胸を押さえた。



「…なんと美しい娘だ。まさか、この者も神龍からの贈り物というわけか?」



そう呟くなり、ガーリックJr.はリファの半身を起こさせ、じっとその顔を見つめている。


そして、彼女の胸に耳を当て、心音を確認した。


心臓は、規則正しく動いている様子。ただ、彼女の身体からオーラが完全に消えてしまっている為、今は気を失っているのだろうと思われる。



「ガーリックJr.さま、その娘をどうするおつもりなのです?」



何も言わず、黙ったまま彼女を見つめるガーリックJr.に対し、一人の従者が彼の後ろからヒョコッと顔を出し、尋ねた。


青緑の肌で、白髪のこの男はガーリック三人衆の一人。名をニッキーという。三人の中では人間に近い容姿である。



「神龍に与えられし貴重な娘です。殺しはしません。有難く頂戴しておきましょう。そうですね…世界の支配者となるこのわたしの妃にして差し上げても良いでしょう」


「まあぁ〜…ついてるわね、この子。殺されずに済むなんて…ガーリックJr.さまに感謝なさいよ〜?」



ニッキーは、未だ気を失っているリファの頬を軽く突っついた。


その頬の感触は、まるでマシュマロのように柔らかかったようだ。



「さて……」



ガーリックJr.はマントを翻(ひるがえ)すなり、リファを抱き上げた。



これで怖いものは何もなくなった



父の復讐を果たし

神によって光を与えられた

人間どもを皆殺しにし

世界をわたしの思いのままにするのだ!



しかし……


永遠の命と共に

最愛の妃となる者まで

手に入るとはな…



「クク…これから面白くなりそうだ」



ガーリックJr.は、不気味な笑みを浮かべ、三人の従者達を横切る。


すると、彼らは頭を下げた後、一斉に声を揃えて歓声を上げた。




「我らがガーリックJr.さま!バンザーイ!バンザーイ」


「バンザーイ!バンザーイ!」


「悟飯を返せぇええーー!」


「ゴハンをかえせぇええーー!……え?」




つい釣られて復唱してしまったガーリック三人衆だが、後に異変に気が付き一斉に後ろへ振り返る。



するとーー。



空からやって来た一人の青年が、彼らに挑まんと強く睨みつけていた。


そう、彼こそがリファの運命を変える人物、孫悟空である。


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あきゅろす。
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