雲に覆われ
アトラス界が崩壊し、GZやその他の全ての民が消滅した。
恐らく生存者は残っていないだろうと思わざるを得ない程の惨事だった。
だが、幸いな事にある場所では一人だけ生存者が見つかったという。
「…いったた……!」
それは他でもない。GZに憧れ続けているアトラス聖霊、リファだった。
彼女は瓦礫の中から出てくるなり、頭や服に付いた石などを振り払った。
これだけの衝撃を受けていながら、怪我一つしていないとは、かなり頑丈な身体である。
だが、肉体は無事でも新たな問題がリファの頭を悩ませる。
「…ここ、どこ…?」
辺りを見回し、何か見覚えがある場所がないかを必死に探す。
だが、見覚えがあるどころか、周りには雲しか見当たらない。
どれだけ進んでも、やはり雲ばかりに覆われている。
「…上から見てみたら分かるかな……」
リファは自身の翼を広げ、上空へ舞い上がった。
「…あら〜…やっぱり……」
思わず苦笑を浮かべるリファ。
上から見下ろしても結果は同じ。辺り一面が雲に覆われていた。
ーーストンッ
再び地上に戻るなり、盛大なため息をついた。
誰一人居ない。何も存在しない。
ここは一体どこなのだろうか。自分は一体どうなってしまったのだろうか。
「…ラニア、タグラ……」
ふとアトラスに居た頃の事が脳裏に過る。三人で楽しく会話をしていたあの頃が恋しくなったようだ。
普段当たり前のように傍に居た二人。本当に大切なものは居なくなってから気がつくもの。
彼らが居なくなり、その有り難さを実感すると共に寂しさが込み上げてきた。
近くの雲にそっと触れてみる。感触は綿のように柔らかい。まるで生きているかのようにフワフワと動いている。
「………っ!」
何を思ったのか、リファはキラキラと目を輝かせながら、もう少し大きな雲がある場所へ移動した。
そしてーー。
ーバフンッ!
「ぴぎゃーーーっ!」
「………え?」
雲に向かって思い切りダイブすると、潰れたような悲鳴が聞こえた。
まるで本当に生きているかのように。
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