私の憧れ 「おいっ!また一つ星が殲滅したらしいぞ!」 「…ま、またか!?一体どうなっているんだ。銀河パトロール隊はまだ動かないのか?」 「…それが彼らは非協力的でな……だが無理もない。相手が悪過ぎる。オレ達のご先祖様でさえも、まるで歯が立たなかったって言うしな…」 「…ま、まさか…その相手って……」 「おい、お前ら!私語は後にしろ!今から救援に向かうぞ!」 「オレら…確実に死ぬな……」 ここは、アトラス界の本拠地となるアトラス大神殿。新たな星の救世主達を生む神聖なる場所である。 そして、この界域に住む者達の事を【アトラス聖霊】という。彼らの背中には皆、七色に輝く翼が生えている。 頭上に輪光がない事から、彼らは死者ではなさそうだ。ナメック星人の頭に触角が生えているように、彼らの翼もアトラス聖霊の特色の一つなのだろう。 先程の二人が話していた通り、とんでもない化け物のような強さを持つ者が現れた為、現在全宇宙は大混乱に陥っている。 星を守護するという大役を担っている彼らは大忙しのようだ。 因みに、彼らのような上流階級の守護聖霊は【GZ(ジーゼット)】と呼ばれている。 だが、彼らのように偉大な使命を担う者ばかりではない。中にはそうでない者も存在する。 アトラス聖霊には、星を支援する為の能力が一人一人に備えられているが、成長は個人差がある。 早熟の者や晩成の者、中には全く成長のない無能な者も稀に居るらしい。 「…はあ〜…いいなあ……」 彼らが七色に輝く翼を広げ、空に消えて行った後、一人の少女が柱の後ろからひょこっと顔を出す。 彼女の名は【リファイン・レクラーク・バートレット】といった。周りからは【リファ】と呼ばれている。 彼女はごく一般的な総合事務職である【AC課】に所属している。 手にはホウキを持たせてあるが、特に掃除をしているわけでもない。 ホウキの柄に両手を乗せ、先程飛び去って行ったGZ達を羨ましそうに眺め、時折溜め息をつく。 「あ!居た!リファ!?」 そんな事を繰り返していると、もう一人のアトラス聖霊が空からやって来た。 「おい!何やってんだ!まだ仕事終わってないんだろ!?」 現れたのは、サラサラした銀髪の好青年だった。 彼は有能なGZの一人で、名を【ラニア】といった。リファの友人であり、何かと彼女の世話を焼いている。 今回も、自分の側に彼女が居ない事に気がつき、探しにやって来たのだ。 腕組みをし、呆れたように彼女を叱責する。 「…私に仕事なんてないもん」 一瞬チラリと彼の方に視線を向けるが、直ぐにプイとそっぽを向いてしまった。 「何だよそのニートみたいな発言は!お前にだってちゃんと仕事与えられてんじゃねえか」 「わっ…私だって現場に行きたい!外の世界を見てみたい!」 ラニアに詰め寄り、くわっと壮大な迫力で反論する。 だが、顔面を彼にガッシリと掴まれ、後ろへ押し返された。 「あぼぼぼぼっ!」 顔を片手で押し付けられ、リファはその手を掴み、どかせようと力を入れるがビクともしない。 プルプルと身体を震わせている。これも有能者との力の差である。 「…まだそんな事言ってんのか?お前の潜在能力の無さで答えは出てんだろ?一瞬で消されるぞ」 ーードサッ…… 突然ラニアが顔から手を離したその反動により、リファはバランスを崩し、尻餅をついた。 尻を強く打ち付け、若干顔を歪めるが、そのまま何も言わずに静かに正座をした。 「…一度だけで良いの。会ってお礼を言いたいだけで……」 膝に置いている手をギュッと握りしめる。どうやら相当深い思い出があるようだ。 「あー…前に言ってた男か?それは不可能だろ。サイヤ人は絶滅したって話だしな。その事はお前もよく知ってるだろ?」 困ったように眉を歪めるラニア。 サイヤ人というのは、宇宙最強クラスの戦闘種族の事である。 その脅威的な力により、銀河をも破壊され兼ねないと、全宇宙で恐れられる存在だった。 だが、丁度全盛期だった頃、強大な力を持った悪に星ごと破壊されてしまった。 そして、リファが探している男も同じくサイヤ人だ。 よって、その男が今も生きているとは到底考えにくい。 ラニアとしては、リファには早く前に進んで貰いたいと思っていた。 いつまでも過去に引きずる彼女に対し、複雑な気持ちが込み上げてくる。 それも、一人の男の為だと知ると尚更だ。 「…いや、きっと生きてるよ!クールの中に優しさを感じさせる人だった!で、とってもワイルドな人だったもん!」 「いやいや!それは全く関係ないと思う!」 「おーい!ワイルドでクールな男なら此処にもいるぞ〜!」 「なっ…そ、その声は……」 突然後ろから聞こえてきた声に、リファは即座に反応した。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |