尻尾の生えた人間
「ボクもね、お姉ちゃんみたいな羽じゃないけど、他のみんなが持っていない物、あるんだよ」
リファの隣にちょこんと腰を下ろし、両足をパタパタさせている悟飯。
彼女の方に顔を向けながら、嬉しそうに話し始める。
「へ、へえ〜…何だろう。純粋な心とか、かな?」
一方、最早隠す事も許されなくなってしまったリファ。
とうとう諦め、そのまま受け流しながら、悟飯のキラキラと輝く話を聞く事にした。
すると、悟飯はリファの言う事に首を左右に振ると、ピョンと階段から腰を上げ、彼女の前で背中を向ける。
その時であった。
「え……そ、それ……」
ピョコピョコとまるで生きているように動く茶色い毛の生えた長いものが目に留まる。
それは、悟飯の尻へと繋がっていた。
今まで彼を守る事で精一杯だった為、そこまで気が付いていなかったのだ。
悟飯に尻尾が生えていたなどーー。
リファも階段から腰を上げると、悟飯の前で屈む。
「…悟飯くん、もしかして君は……」
そして、彼の両肩に手を添えながら何かを問おうとした。
「…へ?なに?」
「…ううん、なんでも、ない……」
悟飯の瞳を見つめているうちに、妙に胸が苦しくなった。
リファは、肩に添えていた手を離すと、そのまま彼に背を向ける。
きっと、悟飯は自分が知りたい事を問えば、包み隠さず答えるだろう。
それが物凄く怖かった。もし、真実を知ってしまえば後戻りは出来ないからである。
結局、自分の胸の内を明かす事は出来なかった。
彼女が驚いたのは、悟飯に尻尾があるからではない。
知っていたのだ。
彼の他に、以前尻尾の生えた人間が居たという事を。
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