胸騒ぎ
だが、ホッとするのも束の間。一つだけ厄介な問題が残ったのである。
それは、正気に戻っても少年にはリファの姿が見えているという事である。
彼女自身、それが不思議で仕方がなかったという。
だが、今はそれどころではない。
少年に自分の正体を悟られないよう、オーラを少しずつ解いていく。
そして、完全にオーラが消えた事を確認すると、少年の両手をギュッと握りながら、正気に戻った彼にもう一度問う事にした。
「…ねえ、大丈夫?お父さんとお母さんはどこかな?はぐれちゃった?」
すると、少年は今度は泣きそうになりながら、フルフルと首を左右に振った。
「…ボク…悪い人達にさらわれて来ちゃったんだ……」
「さ、さらわれた!?え、えっと…どんな人だった?」
衝撃的な事実を聞かされ、リファは慌てて少年に詳細を求めた。
「…こわい人達が…ボクを家来にするって…それで、せかいをしはいするって……」
「…世界を支配!?ま、まさか……」
ーータタタタタッ!
妙な胸騒ぎがしたリファは、少年を抱き上げ、一目散に走り出した。
その際に、出口がないか辺りを見回す。
どこを見ても檻だらけの部屋ではあったが、一箇所だけ僅かな光を見つけた。
「あそこかもっ!」
猛ダッシュし、その光の方へ向かうと、石の階段があった。
リファはその階段を一気に上がる。その時、一瞬リファの表情が歪んだ。
(…何だろう…上に行くほど苦し…)
階段を上るにつれて、リファの息が乱れていた。
その原因は、階段を上りきった時に明らかとなった。
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