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当時の事





「あーあ、相変わらず可愛いよなあ…リファのヤツは……」



プリプリと怒りながら飛び去っていくリファを、タグラは愛おしそうに見つめている。



「フン…あんな奴のどこが……」



一方、ラニアはリファにより変えられてしまった己の姿に嫌気がさしていた。


頭に着けられた花の冠を放り投げると、自らの気功波により、本来のあるべき姿に戻した。


すると、先程まで萎れていた花達が、土に戻された事により、息を吹き返したかのように再び蕾を開いたのだった。



「…で?リファはまた仕事中に抜け出して、GZ達を見ていたのか?」



一方、タグラは鼻歌を歌いながら、妖精ならではの衣装を楽しむかのように、ドレスにあしらわれたフワフワのプリーツを広げてみせた。


だが、筋肉質な彼にこのようなメルヘンに溢れる服装は、刺激が強すぎるようだ。


側にいた動物や虫達が目玉を飛び出させ、急ぎ離れて行ったのが何よりの証拠である。



「…ああ、いつものアレだ。例のサイヤ人に会いたいんだと」



ラニアは、リファの術を完全に解き、服を整えながら気だるそうに答えた。


もう何度目だろうか、リファの逃走劇は数え切れない程に度々あった為、ラニアもタグラも彼女の対応に慣れているようだ。



「無茶言うよな。奴の種族は既に滅んだっつーのに。それに、アイツが奴と出会ってもう1000年以上の年月が流れている。オレ達にとっては1000年なんて短いもんだが、外界の奴らは違うだろ……?」


「ラニア、確かお前…リファが昔迷子になったその時、他のGZ達と一緒に捜しに行ったんだよな?」



ラニアの話を聞いている途中、ある事を思い出したようだ。


タグラは彼の方へ視線を向け、当時の詳しい状況を問うた。



「ああ、オレもガキだったからよく覚えてねえけど…アイツ、ご両親の守護する惑星で迷子になってやがった」



当時の事を思い出し、呆れたように笑うラニア。彼は他の者よりも特に秀でていた為、子供の頃からGZ達の任務に同行する事がしばしばあった。


リファが居なくなった時も、捜索に積極的に加わったのである。


ただ、リファがどうやってアトラス界から出て行ったのか、未だに分からないようだ。


だが、考えられる動機はある。それは、リファが見つかったその惑星が、彼女の両親の守護惑星だったという事だ。


当時有能なGZだった彼らは、使命によりアトラスを離れなければならなかった。


その為、リファと会う機会が殆どなかった。


恐らく、離れて暮らしている両親が恋しくて、会いたくて仕方がなかったのだろう。


産まれて間もない頃は、毎日毎日泣いてばかりだったという。



「…その時リファを助けたってのが例のサイヤ人なんだろ?だが、実際にサイヤ人がその星に来たのは、もっと後の話じゃなかったか?」



タグラは一歩前へ出るなり、そう問う。時期が合っていない事に疑問を抱いているようだ。


やはり、当時の状況が相当気になるのだろう。



「…さあな。科学者達は何らかの異常現象により、宇宙空間でズレが生じたんじゃないかと言っていたが……」



当事者であるラニアも、詳しくは知らないようだ。


その後、運悪くも宇宙全土で大戦争が勃発した為、リファを捜しに向かった者も含む多くのGZ達が次々に息絶えていった。


そして、やがて真実を知る者は居なくなった。


その代わりとして、新たな意識が彼らの間で抱かれ始めたのだ。



「…だが、相手はあのサイヤ人だ。何の企みもなく幼いリファの面倒を見るなんて考えられんぞ。恐らくリファの両親との関係を利用して、良いように使うつもりだったかもしれん……」



タグラは腕組みをし、複雑な表情を浮かべる。


そう、新たな意識とはアトラス聖霊のサイヤ人に対する人種的偏見である。


アトラス聖霊は、如何なる状況においても私情を一切挟まず、常に平等に接しなければならない。


だが、サイヤ人は今まで様々な問題を起こし続け、アトラス聖霊達もこれまで多くの犠牲を払ってきた。


よって、彼らサイヤ人の事を良く思っている者は極めて少ないだろう。


タグラもそのうちの一人だった。



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あきゅろす。
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