メガネメガネ
「…ハアハア…また逃げおって…」
あれから数分間、魂達の逃走劇に付き合わされ、男は走り回っていた。
だが、一向に捕まらないまま今に至る。
因みに、リファは魂達の捕獲に加わっていない。捕まえる理由も、その必要もないからである。
その光景をじっと眺めているだけだった。
「どうしようもないヤツらだ…魂に触れないのをいい事に好き勝手しおって…」
「…え、魂には触れないんですか?」
男の一言にリファはピクリと反応し、至って変わらない様子で当たり前のように問うた。
実際、彼女は魂達に向かってダイブしたという事実があるからだ。
一方、彼女のその一言を聞いた男は、信じられないと言わんばかりに驚いている。
乱れた息を整えながら、彼女の言葉の意味を問う。
「…な、アナタはヤツらに触れるとでも…まさか…閻魔様以外は有り得ん…」
「触れますよ?ほれっ」
「えぇぇっ!?」
リファのとんでもない行為に驚き、男の目が飛び出した。
そのオーバーなリアクションにより、かけていたメガネが宙に舞い上がる。
やはりメガネがないと何も見えないのだろうか、男は地べたに這い蹲(つくば)り、手探りでメガネを探し始めた。
「…何でそんなに驚くんだろう…ねえ?」
男の行為を一部始終見ていたリファは、呆然としながら呟いた。
三体の魂を一つ目は頭の上、二つ目は肩の上に、三つ目は彼女自らで抱きながら。
「…っ!だから言っただろ?普通は触れないんだよ。オレ達魂には!」
リファの腕の中で答える魂A。
先程よりも小さくなっているのは降参の表れだろうか。だが、こうもアッサリと捕まるなんて彼も思っていなかったのだろう。
「はい、おじさんメガネどうぞ!」
足元に落ちているメガネを拾い、男に手渡すリファ。
「…お前、本当に何者なんだ?」
そんな彼女を、魂Aは若干警戒するように、ブルブルと震えながら見ていた。
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