メガネの男
「…ところで、アナタはどこの星の出身ですか?」
男は、またもやメガネをクイっと上げながらリファに問うた。
「…えっと…アトラス界です」
「…アトラス?それはまた珍しい星のようで…」
今まで聞いた事のない星に、少し興味を持ったのか、男は懐から手帳とペンを取り出すと、彼女が話す大事な部分をメモしつつ、その話の先を促した。
「…アトラスは宇宙には存在しない世界でして…一つの次元で成り立っている大規模な界域…だそうです」
以前ラニアから教えて貰った事を思い出し、彼に話し始める。
当時は眠い話ばかりを毎回聞かされ、嫌気がさしていたが、今となっては聞いておいて良かったと彼に心から感謝した。
「…なるほど、嘘を仰っているようには見えませんな。良いでしょう、ついて来てください」
リファの一生懸命に話すその気持ちが男に伝わったのだろうか。彼はフッと笑い頷く。
そして、自分の後について来るよう、手招きをした。
「…あ、あのっ…どちらへ?」
「審判の間です。閻魔大王様なら何かご存知かもしれません。お会いすると良いでしょう」
「…えんまさま!?ちょっと待ってください!私、舌抜かれるんです!?」
閻魔大王の事はリファもよく知っていた。命ある者がその生涯を終えると連れて来られると同時に対面する冥界の総司だと。
そして、閻魔大王は舌を抜く為のヤットコを持っているのだと。
何にせよ、あまり良い印象を持っていない事は確かである。
「…?何をワケの分からん事を仰るのです?アナタは何も悪い事はしとらんでしょう?」
「…は、はあ…確かに何もしていませんけど…」
「それに、どちらかと言えばあのバカタレ三体組の方がその可能性は高いと思いますが…」
「……え?」
そう言うなり、男はある方向を指差しながら呆れ顏で答える。
とてつもない砂埃を立てながら、彼はすかさずその方向へ走っていく。
「またお前達はあああーー!今度という今度は逃さんぞ!!」
「げっ!やべっ…見つかった!お前ら、とっととズラかるぜ!」
「「あいさー!」」
男の指差す先には、慌てて逃げる先程の魂達の姿がフラッシュエフェクトがかかる程に酷く目立った。
、
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