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初めてのひとりでできるもん





「ところで、お前さんはどんなものが食べたいのかな?」



台所へ移動し、界王の料理作りを手伝う事になったリファ。


界王は冷蔵庫を開けながら、中に入っているあらゆる食材を吟味している。


食べたいものを聞いてみたものの、この世の食材を一切知らなければ意味がない。


案の定、リファは少し離れた場所で難しい表情を浮かべている。


そして、台所のあちらこちらを物珍しそうに眺めている。


多少の汚れはあるが、綺麗に手入れしているのがよく分かる。界王は毎日自炊して生活しているのだろうか。



「ちょっとこっちへ来てみい。だいたいの食材は揃っておるぞい」



実際に食材を彼女に見て貰おうと、チョイチョイと手招きをした。


界王に呼ばれ、リファはヒョコヒョコと彼の元へ近付き、指差す方向をそっと覗いてみた。



「わっ…何かここだけ肌寒いですね!どうなってるんですか?」



冷蔵庫のひんやりした冷気に驚き、思わず界王を見やるリファ。


オーラが満ちているアトラス界には当然電化製品など存在しない。


その為か、その他の神の世界でも同じだと思っていたようだ。


だが、意外にも界王の居る星にこのようなハイテクなものがあり、驚きを隠せない様子。


となると、アトラス界の文明はかなり遅れているということになるのだが。



「ここに生ものなど傷みやすいものを保存しておくのだ。なかなか便利な道具じゃぞい」


「へぇ〜…自動で温度を下げる事が出来るなんて、素晴らしいですね!」



冷蔵庫の中の程良い冷気に清々しさを感じ、顔や手を突っ込んだりと、リファは初めて見るものに興味津々だ。


その無邪気さは、まるでタイムトリップしてきた侍のように新鮮であった。



「どうかな?何ならわしのオススメを作ってみるか?」


「あ、はい!そうして頂けると助かります」



やはり、食材だけではどんな料理が出来上がるのかよく分からない。


とりあえず初めは界王のオススメを共に作る事にした。



「まずは履き物を持ってきたから使うと良いぞ。さっきからずっと気になっていたんだが…何で裸足なんだ?」



界王は未使用のスリッパをリファに手渡した。此処に来る前に何があったのか気になる様子。



「地球にいた時、水に濡れてしまったので乾かしていた途中だったんです……」



だがその後、裸足のままラディッツに攫(さら)われてしまった為、履く機会がなかったわけだが、そこまでは話さなかった。


彼女の話を聞き、界王は苦笑を浮かべていた。あまり納得していないのかもしれないが、敢えて突っ込まない事にしたようだ。



「では…これを服の上から着てみい」



界王に渡されたのは白い布地の何か。エプロンだろうか。


ふと界王の方を見てみると、いつの間にか給食のおばちゃんのような割烹着姿に変わっていた。


その姿は、何気にマッチしている。


もしかすると、リファが手に持っているそれも、今界王が着ているものと同じデザインなのかもしれない。


その場で広げてみると、やはり予想通りだった。割烹着も、その上に乗せられて三角巾も、キレイにアイロンがけされている。


リファは界王の着ている姿を手本にしながら、割烹着を頭から被り、袖に腕を通す。



「あれ……あれ?」


「ん?どれ、貸してみい」



だが、三角巾の付け方だけは分からなかったようだ。


装着に苦戦していると、界王は後ろを向くようリファに促し、慣れた手付きで三角巾の先と先を括(くく)った。



「ありがとうございます」


「ふむ、バッチリだな。なかなか様になっておるぞい」


「そ、そうですかね……」



給食のおばちゃんの姿へと早変わりしたリファは、界王に似合っていると言われ、照れ臭そうに笑った。



「さて、では始めようか。レッツ、クッキングタ〜イム!!」


「おーー!!」



界王が拳を天井に向かって上げると、リファもそれに合わせた。


ついに、リファの初めての料理体験が始まる。果たして界王の手伝いを無事終える事が出来るのだろか。


もしこの状況が漫画ならば大成功するのだが、現実はそう甘くはない。


彼女の笑顔が真っ青に変わるのも、時間の問題だろう。


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