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閻魔大王を説得





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以上、ここまでが約数時間前の出来事である。


だが、リファの閻魔大王への説得は未だ続いていた。いや、これからが闘いなのかもしれない。



「何でダメなんですか!?あの人は…ラディッツさんは正しい心をちゃんとお持ちです!」


「しかし…あやつは過去にたくさんの悪事を働いておる。残念じゃが地獄行きは変えられんのう…」



ラディッツの審判について、猛烈に抗議し続けるリファ。その勢いは止まらない。



「過去に囚われていては前に進む事も出来ません!閻魔様は罪を犯した者にチャンスも与えないのですか!?」



巨大朱肉の上に片足を上げ、威嚇してみせるが何の迫力もない。



「ならば…おぬしはあの者を天国に行かせろと言うのか?」



閻魔大王はデスクに向かって前のめりになり、覗き込むようにリファを見やる。


勿論困った表情は変わらない。だが、何処かしら緩んだ顔の筋肉を引き締めようと我慢しているようにも見える。


少し高さのある朱肉に少し無理をして片足を乗せる彼女の姿が可愛らしく見えたのだとか。


だが、これほどに真剣に訴えている彼女に向かって、まさかそんな事を言える筈もない。


胸の内を悟られないよう、口をモゴモゴさせて表情をごまかし、彼女の返答を待った。



「そっ…そうじゃありません!だって、魂が浄化されたら形も記憶も全てなくなっちゃうんでしょう?あの方には記憶をなくされては困るのです…」



何となくバカにされているように感じたリファは、途端にムスッとした顔に変わる。


冥界の魂浄化とは、悪を完全に排除するだけで、結局はその者自身を更生させるわけではない。


過去の記憶も何もかもリセットし、一からやり直せという意味だ。


完全に記憶を無くした状態では、自分が何をしたのか、何故そこに居るのかも分からないまま、苦痛な日々を送らなければならない。


いや、もしかしたら何も分からないまま地獄に堕とされる事こそが、罪を犯した者への最大の罰なのかもしれない。


だからと言って、弟を庇って犠牲になったラディッツに、そこまでしなければならないのだろうか。


確かに、過去にたくさん罪を犯してきたのかもしれない。その事実は一生消えないという事も十分に承知している。


だが、冥界の総司ならば物事をあらゆる視点から見る事も大切ではないのだろうかと、リファはそう思っていた。


何故自分の想いが通じないのだろうか。 臨機応変の対応は、人類の行く末を思えば不可欠な事だ。めちゃくちゃな事を言っているわけではない筈。



「リファよ…お前は何か勘違いをしとるようだな…地獄に堕ちた者全てが記憶を失うわけではないぞ?」



やれやれと溜め息をつき、再び口を開く閻魔大王。



「…どういう事ですか?」



それを聞いたリファは、一旦沈黙した後、疑り深そうに顔を上げる。


益々わけが分からなくなり、更に顔が歪んでいる。



「スピリッツ・ロンダリング装置にも限界があるからのう…」



まだまだ冥界も発展途上という事なのだろうか。閻魔大王曰く、例外として浄化しきれない極悪人も稀に存在するらしい。


その者達の魂は意識と共に地獄で引き継がれ、苦痛の日々を過ごさなければならない。


魂を全て浄化し無になるには、やはり己の罪を受け入れ、更生に対し前向きになる事が必要なのかもしれない。


つまり、ラディッツの魂が完全に浄化されなかった場合、そのままの意識を持ったまま地獄で暮らさなければならないという事だ。


考えただけでも悪寒が走る。


それではいくら記憶が残っていても、天国行き確定である悟空と出会う事は二度ないに等しい。


これはこれで厄介な問題だ。


何とかラディッツの地獄行きを止めたい。最悪それが無理でも、悟空とラディッツを引き会わせる事さえ出来ればーー。


リファはギュッと唇を噛み締めた。



「…なら…せめて悟空さんと会わせてあげて下さいませんか…お願いします!」



再び頭を深く下げる。もう為(な)す術がないのなら、一瞬だけでも二人が再会出来るチャンスをあげて欲しいと何度もお願いした。



「リファ…オマエさ……」



すると、しばらくの間黙っていた不知火(しらぬい)が頭を下げているリファの肩にポンと手を置く。



「…二人を再会させる為なら、どんな事にも耐えられるか?」


「どんな事にも…って……?」



何とも意味の深そうな問いだ。この問いに肯定すれば、この上ない地獄を味わう事になるのではないだろうか。


だが、ラディッツだけが地獄に落とされるのをただじっと見ているわけにもいかない。



「それに耐える事ができれば…ラディッツさんの地獄行きを取り下げて頂けるんですか…?彼を助けて頂けるんですか!?」



ガッと勢い良く不知火の服を掴んでは、身を乗り出す。


今のリファには、自らに降りかかる危険など、一切頭になかった。


ラディッツの地獄行きを阻止出来るならば、何だって出来ると言うように、その瞳には迷いがない。



そんな彼女の熱い訴えに、不知火はニッと笑い頷いた。


よくぞ言った。これだけの覚悟があるなら、きっと乗り越えられるだろう。


不知火は閻魔大王の方を見上げ、ある提案を持ちかけた。



「…閻魔様、コイツを蛇の道へ行かせてはどうでしょう?界王様から特別許可証さえ頂ければ、問題ないと思いますが……」


「な…なんじゃと!?」

ーーバンッ!!

「うわあっ!!」


不知火の提案に閻魔大王は大層驚き、デスクを力一杯に叩いた。


その振動により、リファは巨大な地震が来たような感覚に襲われ、尻餅をついてしまった。



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あきゅろす。
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