絶望寸前まで
“生き残った二人のサイヤ人はオレより更に戦闘力が上なんだぞ”
とんでもない事実を聞かされ、悟空とピッコロの口からは何の言葉も出てこない。
二人が脱ぎ捨てた重りが、風でゆらゆらと靡(なび)いている。
今まで自身を強くしてきたものが、存在そのものをすっかり忘れ去られてしまったかのよう。
各々が努力を積み重ね、歩んできた道を全て否定されたような気持ちにさせられたという。
それらを外し全力で挑んでも、ラディッツとの力の差は全く縮まらなかったからである。
彼らの拳を握る力が更に強まる。
自分達の力がラディッツに及ばないという悔しさなのか。それとも、勝てないかもしれないという不安の表れなのか。
「く…くそったれ…あと二人のサイヤ人…ってのは更に強いってのか…どうなってやがる……」
ラディッツでもこの強さだ。彼よりまだ更に上が存在するなど、想像もつかない事だろう。
ピッコロも悟空も、現実離れしたこの状況を上手く受け止める事が出来ないでいるようだ。
「ふはははははっ!!サイヤ人の恐ろしさを今頃知ってももう遅いぞっ!」
高笑いするラディッツは、片方の掌を二人に向かって広げ、そのまま前へと突き出す。
とどめの合図といったところだろうか。
「せっかくの忠告を聞かずに刃向かうような愚か者には…死、あるのみだ……!」
その直後に彼の声のトーンが下がり、辺りの空気が一変する。
気もどんどん高まっていき、思わず後退りしてしまうほどだ。
「…め、めぇったなあ…聞かなきゃ良かったぜ……」
流石の悟空も、最早笑う事しか出来ない状態にまで追いつめられている。
すると、隣に居るピッコロが横目で話しかけた。
「あの時みたいにワクワクするだろ?孫悟空……」
この窮地こそが闘いの醍醐味であると、彼自身も何となく理解できるのだろう。
「へへ…わりぃな…今回もワクワクしねぇよ。前よりもずっとだ。おっそろしくてガタガタしてらあ……」
以前悟空がピッコロと手を組み挑んだガーリックJr.は、彼ら二人が重りを外した事によって実力に大きく差がつき、簡単に倒す事が出来た。
もっとも、彼の場合はドラゴンボールで永遠の命を与えられた為、死に至る事は決してなかったわけだが。
「当然だ!だが、その恐怖ももうすぐ絶望に変わる事になる」
あの時と比べ、今回は状況がかなり悪い。このラディッツという男は、実力そのものが二人を遥かに上回っているからである。
「…けど、こうしちゃいられねぇな。やるぞ!!」
「そうするしかなかろう!!」
悟空とピッコロは、再び構えを取る。
どんなに状況が悪くても、まだ完全に勝ち目がなくなったわけではない。
いくら相手が強くても、必ず隙ができる筈。彼ら二人では自分には敵わないという絶対的な自信を持っているからである。
悟空はその瞬間を狙うつもりのようだが、果たして上手くいくだろうか。
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