言葉の刃
「おい!リファを離せよ!」
地上から空に浮いているラディッツに向かって必死に声を張り上げる悟空。
対するラディッツは、降りてくる様子もなくただ顔をニヤつかせ、彼らの方を見下ろしている。
「そいつは無理な願いだ。貴様の息子の代わりにこの女を連れていく事に決めたからな……」
「なっ…なに!?」
ーースタッ!
ラディッツはリファを抱えたまま地上へ降りてきた。彼女はピクリとも動かず、グッタリとしている。
「…………っ…」
だが、身体は動かなくても意識だけはぼんやりとあるようだ。
(…ち、ちょっと待って…ラディッツさん…私を連れて行くってどういう事…?だって、さっきは……)
今のラディッツの言葉により、リファは混乱してしまっている。
先程自分に話した内容と、明らかに相違していたからである。
(違うよね…?ラディッツさん、あなたはそんな事を言いたいんじゃないんでしょ…?お願いだから…素直に伝えてっ……!)
出来る事ならこの場でそう叫びたかった。だが、今は彼らの話をぼんやりと聞くだけで精一杯だった。
だが、そんな事は誰にも分からない。悟空と来たら、全く動かないリファの事が心配でならない様子。
「…おめぇ…リファに何した!?そいつはオラが居ねぇと死んじまうんだぞ!連れて行くなんて絶対ぇにさせねぇ!」
鋭い眼圧でラディッツを睨み付ける。今にも殴りかかりそうな勢いだ。
「慌てる必要はない。この女は死んでおらん。随分と衰弱していたがな…このオレが助けてやった」
「…助けたって…何言ってんだ!おめぇにそんな事出来る筈ねぇ!」
ザッと砂利の音を立て、一歩前へ出る。
何も知らない悟空に対し、ラディッツは思わず口元に手を当て、失笑してしまった。
「どうやら何も気がついていないようだな…愚かなヤツだ。自分だけが特別な存在だと思っているとは……」
「なに…!?どういう事だ!?」
「まだ分からんのか?兄弟である貴様とオレとの最も重要な共通点ではないか」
ラディッツの言葉と同時に、彼の尻尾がピコピコと動いた。
「っ!?」
それを目にした途端、悟空はハッと何かに勘付いたようだ。
「ま、まさか……」
一歩前へ出ていた足が、何歩か後ろへ後退する。
「…その通りだ。あの女が生きる為に必要とするのがオレ達サイヤ人の気。つまり、別に貴様でなくとも良いという事だ」
ラディッツは顔をニヤつかせながら、ジリジリと悟空の方へ詰め寄る。
「だから何だってんだ!おめぇがオラと同じ気を持ってたとしても、リファを連れて行く理由にはなんねぇぞ!」
「ほう…その慌てようからすると相当この女が大事らしい…益々面白くなってきたな……」
「なんだと……!?」
まるで何かを企んでいるような意味深な言葉で、悟空を挑発し続けるラディッツ。
その度に、悟空に精神的ダメージをジワジワと与え続けた。
「…だが、残念だったな……」
「…………っ!」
(ラディッツさん!もうやめて…これ以上悟空さんを刺激しないで!)
リファは心の中でラディッツに必死に訴えるが、虚しくも届く事はなかった。彼の言葉の刃は、とうとう悟空の急所を貫いてしまう。
「…この女は自分からオレに協力を求めてきた。オレはこいつの要望に応えるまでだ」
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