移動中にて
リファと悟飯がラディッツに誘拐され、しばらくが経過した。
その一方、ピッコロと手を組む事になった悟空はどうしているだろうか。
「もうちょい右だ」
筋斗雲に乗りながら、ドラゴンレーダーを操作し、リファと悟飯が居る正確な位置を探索していた。
「近いぞ!そろそろ下に降りて近付こう!」
「無駄だ!このまま行けば良い!」
「え……?」
ピッコロの言葉に、悟空は何故だと首を傾げる。
「ヤツは妙な機械を使っている!そいつで標的の位置や、その強さまで手に取るように分かるらしいぜ!」
「じゃあ…オラたちが近付いているのも気付いちまってんのか……?」
「ああ、そういうことだ」
「そうか…そうなりゃあ正面からやるしか道はねぇわけだ……!」
思わず苦笑いを浮かべてしまう。不意打ちを狙えば、油断している相手に少しは敵うかもしれないと、密かに淡い期待を求めていたようだ。
だが、あのラディッツを相手に彼らの不意打ちがそう上手く成功するだろうか。
不意打ちを狙っても、正面から向かっても、どちらにしても勝ち目がないのは確実である。
「…それより孫悟空、貴様…あの小娘をどうするつもりなんだ?」
「あの小娘って…もしかしてリファの事か?どうするって、何が?」
「まさかこのまま側に置いておくなんて事はないだろうな……?」
「いや、そのつもりだぞ。オラが居ねぇとアイツ、死んじまうかんなぁ…ん?あれ?ピッコロ、どうした?」
突然飛行を止めたピッコロに気が付いた悟空は、自分も筋斗雲にブレーキをかけ、未だ止まっているピッコロの元へ近付いていった。
「な、なんだ?何怖ぇ顔してんだ?」
向かっていった先にあったのは、眉間にシワを寄せたピッコロの顔。
悟空は思わず顔を引きつらせてしまった。
「貴様…正気か?得体の知れんヤツなんだぞ?少しは警戒したらどうなんだ?」
どうやらピッコロはまだリファの事を信用しているわけではなさそうだ。
確かに、突然地球にやって来て、宇宙が滅亡してしまうなどと聞かされても、すぐに信じられるような事ではない。
何か裏があるのではないかと疑いを持つのは当然に等しい。
「なに、心配ぇねぇって。リファは良いヤツだ。神さまもアイツに協力するって言ってっからな!オラも何か出来る事あったらしてやりてぇんだ」
「へっ!一人の小娘に肩入れするなんぞ、神も随分と堕ちたもんだな。孫悟空、貴様もだ。騙されているかもしれんのだぞ!?その甘い考えが身を滅ぼす事になるのだ!」
ピッコロは声を荒げ、悟空に向かって指を差し向けた。
だが、悟空は全く表情を変えない。目を閉じ、微笑を浮かべながらゆっくりと口を開いた。
「…もし、リファが悪ぃヤツだったらみんなもこんな必死になんねぇさ。ピッコロ、おめぇだってオラの話を聞いてたから、今ここに居んだろ?」
リファには、人を惹きつける何か不思議な力があるようだと悟空は話す。
そして、ピッコロも心の奥底では彼女の事を助けたいと思っているのではないかと問うた。
だが、ピッコロはバカにしたように鼻で笑うだけ。
「オレはあの小娘を信じたわけではない。言った筈だ。オレはヤツの素性を掴む為だと」
だが、ピッコロがリファに会ったのはたった一度だけだ。それで信じろというのも無理な話である。
今回の場合は、様子を見るというピッコロの意見の方が理にかなっているのかもしれない。
「…まあ、細けぇ事は後だ。とにかく、もう一回ぇリファに会ってみりゃあ分かるさ」
悟空はそれだけを言い残すと、再び筋斗雲を飛ばし始めた。
「チッ…!相変わらず甘い野郎だ……」
一方、一人取り残されたピッコロは舌打ちしつつも、悟空の後を追っていくのであった。
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