気の毒な人
「で…でも、どうやって来て貰うんです?」
それこそが一番肝心な問題だ。スカウターの仕組みはリファもよく分かっているだけに、それをクリア出来るのかと疑問を抱いている様子。
すると、ラディッツは再び腕組みをし、彼女の問いに答える為口を開く。
真剣な空気が漂っていてもおかしくない筈だが、先程からリファの様子がおかしい。
「…おい、さっきから何を震えている?ちゃんと前を向いて話せ。重大な事なんだろ?」
リファは、話をする度に後ろを向き、プルプルと肩を震わせていたのだ。
その意味不明な行動に気がついたラディッツは、ムスッと顔を歪める。当の本人がこの調子では何も始まらないからである。
「あ、いえ…す、すみません!ちょっとお腹が痛くなって……」
まさか笑いを堪えていてお腹が痛いなど、口が裂けても言えない。
しかも、それがラディッツが原因である事など、以ての外だ。
前を向いても、リファは極力彼と目を合わさないようにした。
吹き出してしまっては終わりだからだ。せっかくの交渉も全て台無しになり兼ねない。
「腹が痛いだと…まさか、さっきの果実にあたったのか?」
そんな事を思われているなど、全く気がついていないラディッツは、別の心配をしている。
自分が採ってきた果実には確かに毒はなかった。渡す前に密かに毒味をしていたからだ。
それは口に出さなかったようだが、あのラディッツにも意外な面があった事には驚きである。
だが、果実にあたったという確率は0%である。何故なら、リファはラディッツが採ってきた果実をまだ一口も食べていないからだ。
それどころか、彼女の手に握られてもいない。いつの間か落としてしまったのだろうか。
「薬とかは持っていないのか?」
未だ身体を震わせながら蹲っているリファに大丈夫かと問いかける。段々とラディッツが気の毒に思えてくる。
「いえ…大丈夫なんで…それ以上は何も言わないで…!益々ツラくなります……」
「そ…そうか……」
そして、待つ事20分ーー。
「…で?何でしたっけ?」
「お前…本当に世界を救う気があるのか?」
笑いと共に、肝心な話の内容までけろっと忘れてしまっていた。
案の定、呆れたように溜め息をつくラディッツ。もう怒る気力も残っていなかった。
若干息切れしている。この20分間で一体何があったのだろうか。
「あ、ありますよ!やる気全開です!」
「はあ…どうだかな……」
ガッツポーズを見せるリファの方を、ラディッツは横目で疑り深そうに見つめている。
本当にこの女に任せて良いのか、半信半疑の様子。
「…二人のサイヤ人をどうやってこの星に来させるかだ……」
「…あ、はいっ!そうでした!で、その方法は何なんです?」
リファがそう問うと、ラディッツは静かに立ち上がり、彼女に背を向けた。
そして、静かに吹き流れる風と共にその答えが明らかになった。
だが…
「え………」
それは、風と共に吹き去ってしまえるような軽いものではなかった。
「オレとカカロットが戦う事だ」
まるで心臓を力一杯握りしめられるような感覚に襲われた。
まさかその唯一の方法が、最も回避させたい問題だとは思ってもみなかったのだ。
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