知らぬ真実
「…そいつは……?」
リファの手元に目線を落とし、それが一体何の報告書なのかを問うラニア。
リファは震える手で、その報告書を媒介にし、ラニアの身体へオーラを送る。
そうする事により、送られた側の脳内に、報告書に書かれた通りの当時の状況が映像として浮かび上がるのだという。
これも、アトラス聖霊の持つ能力の一つとされている。
「…これ、紀元前の頃の報告書なんだけど、渡された書類の中に混じっていたの。でも私…信じられなくて……」
そう言うなり、震える手で報告書をラニアに渡す。
彼女の目には、今にも溢れそうなくらいの涙が溜まっている。
だが、泣きたいのをグッと堪えていた。きっと何かの間違いだと信じていたからである。
「…………」
一方、ラニアは何も言わずにただ見せられた報告書と、リファに送られたオーラを頼りに、当時の状況を感じ取っている。
「……っ!」
しだいに彼の表情が険しくなっていく。
「…ねえラニア……こんなの嘘だよね?きっと何かの間違いだよね?」
ラニアの服の裾を掴み、必死の思いで彼に同調を求めるリファ。
だが、ラニアは何も答えない。
「ラニア!何とか言ってよ!」
その沈黙が物凄く怖くて、耐えられなかったようだ。
ラニアの腕を掴むと、前後に揺すった。
「ちょっと待て。オレだって知らねえんだよ。こんな事……」
思い悩むように片手で頭を押さえながら、自分を落ち着かせるラニア。
するとその瞬間ーー。
《ラニア!聞こえるか!?お前、今どこにいる!?》
「…タグラか?どうした……?」
突然心の中でラニアに話しかけてきたのは、タグラだった。
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