届かぬ声
「むぐぉっ!?」
だが、それも束の間だった。リファは突然何者かに背後から口を押さえられ、目元は黒くて長い布で覆われた。
更には口元も布で覆われる。手足も拘束され、身動きさえも出来なくなってしまった。
「もがもがっ!むごおっ!」
事の重大さに気がついたらしく、拘束から逃れようとジタバタ暴れだす。
だが、まるで歯が立たない。
「もしかしてこのまま逃げられるとでも思った?そんな大荷物抱えてちゃ、目立たないわけないじゃん」
そんな彼女の事を、ニヤニヤと笑みを浮かべているのは、先程彼女に声をかけてきた三人のナンパ男だ。
「おい、他の奴らに目ぇ付けられる前に、さっさと売り払っちまおうぜ?」
「まあ、待てよ。ちょっとくらい楽しんでからでも遅くはねえだろ。久しぶりの上玉だからな…グヒヒ……」
「バカ野郎!そんな事したら高く売れねえだろうが!それより、口元ちょっと緩めろ。死んじまうぞ」
一人の男の発言により、リファを窒息させていた布が緩められた。
「ゲホッ…!ゲホゲホッ!」
急に酸素が入ってきた事により、激しく咳き込んでしまった。
だが、酸素不足で朦朧としていた意識が、徐々に戻り始めたようだ。
(売る…?何の話をしてるの?…ていうか私、物じゃないんだけど…)
三人のわけの分からない会話が理解出来ず、リファは頭上にはてなマークを浮かべている。
ただ、何となく良からぬ話だという事だけは理解出来たようだ。
「いくらで売れるだろうな…ククッ…金さえ手に入りゃあこっちのもんだ」
そう言うなり、一人の男は何かのケースから手のひらサイズのカプセルを取り出し、 遠くへ放り投げた。
ーーボンッ!
すると、投げた方向に軽い爆発音と共にモクモクと白い煙が上がる。
すると、煙の中から何やら乗り物のような物が現れた。どうやら生命を脅かすような危険な道具ではないらしい。
「こいつでひとっ飛びだ。おい、娘を乗せてとっとと出発するぞ!」
「もがもがッ!もが!」
一体自分を何処へ連れて行く気なのかと、布越しで篭る声を張り上げるリファ。
このような場所で足止めされていては、いつまでたっても目的を達成出来ない。
放っておいてくれと必死に懇願するが、彼らは聞く耳も持たずニヤニヤと笑っている。
「安心しな。今から向かう所は楽園だ。但し……」
地獄の中の楽園だがな・・・
結局リファの願いは届かず、乗り物は空高く舞い上がった。
、
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