人混みに流され
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「おおう…まだ居る…困ったなあ…」
そんな事があって、見つからないように大急ぎで路地裏に入り込んだわけだである。
だが、壁と壁の隙間から見える表通りを覗いてみると、先程の男達がリファを求めて未だ周辺をウロウロしている。
これでは出ようにも出られない状態だ。
好かれるのは有り難い事だが、今は足止めを食らっている場合ではないだろう。
「どこか……抜け道とかないのかなあ……」
辺りを見回すが、殆ど家で連なっている為、抜け道と呼べる場所が見当たらない。唯一あると言えば、家の屋根を一つ一つ飛び越えて行く事だろう。
だが、今の彼女の身体は人間とほぼ変わらない。そのような人間離れした行動は難しいと言える。
だからと言って、いつまでも此処に居るわけにもいかない。
「……よし!」
リファは袴の帯をキュッと締めるなり、再びリュックを背負い直す。
そしてーー。
(見つかりませんように……!)
どうやら強行突破するつもりのようだ。そーっと物音を立てずに、辺りを警戒しながら、路地裏から出て行く。
「…………っ!」
恐る恐る路地裏の壁から顔を出す。
幸いな事に、辺りは何かの騒ぎによりごった返している。リファが出て行っても目立たない程の人混みだった。
(これなら行ける! )
そのままその人混みに混じり、表通りに出た。
人の波に流されながら、どんどん進んでいく。早くこの町から出たいというのが、彼女の本音だ。
そして、町の出入り口を主張するアーチが見えてきた。ゴールまであと僅か。
「はひぃ〜…な、何とか抜けられた」
アーチをくぐり抜け、リファはホッと胸を撫で下ろした。
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