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「ハア…ハアッ…困ったなあ……」



一方、地球の探索を始めたリファは、フラフラと人目のつかない路地裏を歩いていた。


全速力で走ったのだろうか、息が乱れていて、かなりツラそうだ。


それだけではない。何やら物陰に隠れるように、表通りを行き来する人々を不安そうに見つめている。


一体、何があったというのだろうか。


時は数時間前に遡る。




******


「ねぇねぇ、そこの君!そんな大荷物担いでどこ行くの?もし良ければオレとお茶でもしないかい?」


「うひゃー!めちゃくちゃ可愛いじゃん!ねぇ君、彼氏居るの?」


「君みたいな子猫ちゃんが一人でウロウロしちゃ、オオカミさんに食べられちゃうよ?匿ってあげるからおいで♪」



街中をウロウロしていたリファは、たくさんの者から声をかけられた。いわゆるナンパと呼ばれるものだ。


しかも声をかけてくるのは、自分に自信のありそうなナルシストな男ばかりだ。


サラッと髪を掻き上げ、爽やかオーラを撒き散らす自称イケメン達。


彼ら曰く、大抵の女性陣はこの行為と甘い言葉で落ちるらしい。




「…へ?…何ですか今の…もしかして、この星で流行ってる挨拶か何かですか?」


「え…あ、いや……」



だが、リファにはそのイケメン攻撃は通じなかったようだ。


彼らの真似をするように、自分も髪を掻き上げてみる。だが、色気どころかギャグに見えてしまうのが何とも言えないくらいに悲しい。


案の定、ナンパ男達は彼女のユニークな言動に対して、どのような反応を返せば良いか分からず、若干引いている様子。


そのまま何事もなかったかのように、スーッと通り過ぎて行った。



「…え、行っちゃった……もしかして何か悪い事したのかな……」



だが無理もない。リファはこの星の生まれではない為、ここでの常識やマナーなど知る筈もない。



「あ!そうだ!こんな時の為にカミサマが私の為に用意してくれた物があるんだった!」



ーードサッ!



このどうしようもない気まずい空気に耐え切れず、リファは重いリュックを地面に下ろし、中を開けた。


道の中だという事も忘れ、リュックの中身をあちらこちらに放り出し、どんどん散らかしていく。



「…か、カミサマだってー?」


「冗談キツイわよね〜…そんなの居るわけないのに〜……」


「…大丈夫かよ、あの子……」



地球人にとって、神とは想像の世界の人物なのだろうか。道行く人々は、カミサマと何度も口にするリファの事をバカにするように笑っている。



「あった!これさえあれば地球の事がよくわかる!」



リファがリュックから取り出したのは、一冊の冊子だった。



【地球を歩む】


表紙にはそう書かれている。


リファの言った通り、それは地球の神が彼女の為に用意したものである。


彼女が下界で困るだろう様々な問題をあらかじめ予想し、その時の対処法が全てそこに記されているのだ。


勿論、今のような状況への対処法も書かれているだろう。

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